【あなた side】
重い足取りでトイレまで向かうが、上手く足が動かずその場に立ち尽くしてしまう。
目線の先にはトイレの看板が見えているのに、前に進めないのだ。
あなた「やっと前を向こうって思えてきてたのに...ツツ...。」
どうすればいいか分からず、一歩踏む出そうとしたその時だった。
あなた「やばっ...!?」
足がつまずいて倒れそうになる。私は受け身を取る姿勢で目を瞑り、衝撃に備えたのだが....。
(あれ...痛くない...?)
いつまで経っても倒れた衝撃が襲ってこない。私はゆっくりと目を開けると、どうやら誰かが後ろから支えてくれたため転ばなかったのだと理解した。
私よりもはるかに大きいその手が私のお腹を抱えてくれたのだ。
あなた「あ、ありがとうございm...。」
私は慌てて振り返り、その人物を見て固まった。
?「たくっ...相変わらずドジで間抜けだな..."あなた"は」
あぁ。神様は意地悪だ。
どうして先に会っちゃう相手が"彼"なんだろう。
あなた「クロ...。」
***
【黒尾 side】
無意識に走り出したけれど、どこにあなたが居るかなんて分からない。
(ほんとあなたのことになると前が見えなくなるよな俺...笑)
なんて自分に呆れながら、便所がある場所に視線を向けた時だった。
見覚えのある後ろ姿。俺は一瞬で分かった。
"あなた"だってことに__________。
立ち止まった足が一歩一歩とあなたに向かって歩き出す。
だけど、何かがおかしいことに気づく。あなたが全く動かない。
(どうしたんだ...?なんで止まっt...。)
そんなことを考えながら声を掛けようとした瞬間。
あなた「やばっ...!?」
その言葉と同時に転けそうになるあなた。俺は構わず後ろから支える感じで抱きしめてしまった。
やってしまったという気持ちと久しぶりにあなたに会えた嬉しい気持ちで胸がいっぱいになる。
(てか、どうするこの後...。)
緊急事態だとしても、今の格好的に抱きしめている感じになっているだろう。
(声掛けたほうがいいよな?でも...。)
なんて思考を巡らせていると、いきなり振り返って謝罪をするあなたと目があってしまった。
あぁ。もう後には引けないわ。
黒尾「たくっ...相変わらずドジで間抜けだな..."あなた"は」
そう呟いて、俺とあなたは見つめ合ったのだった。
***
【赤葦 side】
今日は音駒との練習試合。多分、春高予選以来だから久々に会う。
(音駒は守備が高い。前よりも守備力上がってるし、一筋縄ではいかないな。)
なんて考え込んでいると、誰かに背中をバシバシと叩かれる。
赤葦「木兎さん...。」
木兎「あかーし!トス上げてくれよ!早くしねぇと始まっちゃうだろ!」
赤葦「分かりました。」
俺はボールを投げてもらうように雀田さんに頼んで位置につく。
雀田「いくよ!」
雀田さんはそう合図してボールを投げ、俺は木兎さんの好きなトスを上げた。
俺が上げたトスを木兎さんは必ず打ってくれる。ボールは勢いよく相手側のコートにインした。
木兎「やっぱあかーしのトスが一番だぜ!!!!!」
ニカッと笑う木兎さんの笑顔に俺も自然と笑みが浮かぶ。
木兎さんの調子も整ってる。しかも、今日は天野さんが来てくれるのだ。
(絶対かっこいい姿見せたい...。)
そんな浮ついた気持ちを持ってはいけないだろと悶々としていた時だった。
木葉「今日はなんか木兎も赤葦も嬉しそうだな?」
木葉さんがそう言って声を掛けてきたのだ。
赤葦「木兎さんはいつも通りでは?俺も普段と変わらないと思いますが...。」
木葉「いや、明らかに2人ともテンションが高ぇよ!」
木兎「木葉〜!さっきの俺のスパイク見てたか!?」
木葉「おー。てか、なんでそんなテンション高ぇの?いつも高ぇけど、今日は特に。」
木兎「だって"あなた"ちゃんが来るからよ!!」
木兎さんの言葉に続々とメンバーが集まってくる。
小見「なになに?」
白福「"あなた"ちゃんって誰なの〜?」
雀田「なんかチラッて言ってた子じゃない?確か赤葦と同じクラスの...?」
木兎「おぉ!絆創膏くれた子!」
鷲尾「木兎が気に入ってる子だったか?」
尾長「なんか俺のクラスでも噂になってました!」
なんてどんどん会話が膨らんでいく...。最悪だ。
雀田「え、なに、てことはさ...木兎と赤葦のテンションがやけに高いのってその"あなた"ちゃんって子が来るから?」
赤葦「いや、その、俺はいつも通りなんで...。」
白福「挙動不審すぎるでしょ〜笑」
木葉「えー。どんな子なんだろ。会うのが楽しみだわ笑」
雀田「てか、赤葦が気になる女子って...ねぇ雪絵?笑」
白福「これは面白い展開になりそうだよね〜かおり〜?笑」
赤葦「ッッ...そんな関係じゃないです!!///」
予想はしていたが、からかわれると落ち着かない。そんな時だった。
反対コートにいた音駒メンバーが何やらザワザワし始めたのだ。
(なんだ...?なんか慌ててる...?)
なんて考えていたら、音駒の主将である黒尾さんが突然体育館の入口に向かって走って出ていってしまった。
それと同時に俺の手首を誰かに掴まれ、驚きながら振り向くとそこには七瀬が息を切らしながら立っている。
赤葦「七瀬?どうした?」
七瀬「赤葦...あのさ...あなたが...!!」
天野さんの名前を聞いた瞬間、俺の体は固まる。七瀬の表情から見て何かあったに違いない。
赤葦「天野さんは今どこに...!?」
七瀬「え、あ、お手洗いに行くって...。」
その言葉を聞いて、俺はトイレに向かって走り出した。
(もし...体調不良で倒れてるのであれば...ッッ)
トイレは体育館の靴箱付近にあるからきっと...。
角を曲がればと思ったと同時に聞こえたのは
あなた「もう近づかないでよ...ッッ!!」
天野さんの叫び声だった____________。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!