【7月11日】
あれから、あのお兄さんと何回か会った。
いつものあの公園で。
あのお兄さんのことを考えていた時、学級委員長のクラスメートが話しかけてきた。
時計を見ると、もう授業時間の2分前。
荷物をまとめて、移動の準備をしながら何気なく窓の外を見る。
私の視線の先には、
あのお兄さんがいた。
多分、マンションの3階か4階だろう。
お兄さんが、洗濯物を取り込んでいるのが見えた。
と思い、本当は大きくブンブン振りたいところだけど恥ずかしいので小さく振る。
お兄さんが、こっちをちらっと見た。
お兄さんも、小さく手を振り返す。
ハッと我に返り、速歩きで廊下を歩いた。
急がないと授業に遅れる…
遅れたら最悪だよマジで。
みんなが静かに先生の話を聞いてる中、ドア開けて入って行かないと行けないんだもん。
その時の視線が恥ずかしい…
やばい、手振ってたのばれてた…
てか委員長まだいたのね
全然嘘だけどそう見えてたんなら嬉しい
うわ、今気づいた。
そういえば私、あの人の名前知らないじゃん
流石にもう誤魔化せないよね
委員長が不思議そうに口を開こうとした時、ちょうどチャイムが鳴った。
委員長がニヤッと笑う。
うわ、ずる!!
先生に頼まれたから遅刻判定じゃないってことか…
委員長にしては遅いなと思ったんだよ
まじで助かった。
教室に物取りに行くだけで付き添いが必要なのかは怪しいけど…
てか委員長優しい。
……
もしかして私がまともに話せるの委員長だけだから気を使って…
そんなこと考えると悲しくなるからやめよう。
……次会ったとき、お兄さんの名前聞いてみようかな
【7月11日】
最近気づいたことは、あのお兄さんが全く笑わないってこと。
まだあんまり話したことないだけかもしれないけど、いつも無表情で話している。
いつかあのお兄さんを笑わせて見せたい、
そう思った
この世界の委員長と月ノ美兎は別です
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。