第44話

約束
378
2023/12/27 14:53
__街 レヴェルリー
ゼロとフェザーが今回足を運んだ場所は、賑やかで活気のある街、レヴェルリーだ。この街は頻繁に祭りや宴などの催しが行われている。そのお陰で街は常にお祭り状態だ。

そんなキラキラ輝いている街の景色や人々を眺めながら、2人はこの街を堪能していた。
フェザー
フェザー
おお…!こんな賑やかな街もあるのだな…!
ゼロ
ゼロ
お前はこういうところは来るの初めてだろ?せっかくだから見てほしくてな
ゼロ
ゼロ
(ここなら、貧民街も遠いから、バレることはないだろう)
貧民街の隣町の人たちに姿を覚えられているので、なるべくその近くを避けたかったゼロは、貧民街から遠いレヴェルリーを選んだのだろう。もちろん。フェザーのことも考えての選択だ。
ゼロ
ゼロ
それにしても、すまんな。俺だけこんな変装して
フェザーは大丈夫なのだが、ゼロがいつものまま外を出ると、必ずと言っていいほどにいくつもの街から人が溢れ出し騒動になる。だからゼロは貧民街に行った時のように服装を変え、帽子でなるべく顔を隠しているのだ。

そのことで謝ってきたのにフェザーは少し驚いたが、何ともなかったように笑った。
フェザー
フェザー
我は全然よいぞ。むしろ顔を隠さなければ、せっかくの休日が台無しになってしまう
ゼロ
ゼロ
それもそうだな…。じゃあ、とりあえずどこか店に入るか。そろそろ昼だし、腹が減っては戦…、今回は遊びができぬ。だぞ
フェザー
フェザー
あぁ!了解したぞ我が主!
久しぶりの2人での外出に、ゼロは気まずくならないか不安を抱いていたが、どうも心配しなくてもよさそうだ。話せば話すほど、心が軽くなるのを感じた。

その親子を、陰ながら見守る。いや、観察している者が3人。
シスラ
シスラ
……普通に仲いいね
ネク
ネク
さすが親子です
尊敬しますと、ネクが輝きの目を向ける。一方シスラは、少しつまらなそうにしていた。鬼の無言を期待していたのだろう。
ユノン
ユノン
………………
その中で、1番乗り気だったユノンは、ずっと静かに2人を眺めていた。その背景は、どこか寂しげで、どこか小さな怒りが混じっているように感じた。
ユノン
ユノン
……………間に入りたい………
シスラ
シスラ
おっ、それ面白そうだね。行ってみる?
ポロリと漏れた言葉に、暇そうにしていたシスラが反応する。しかし、行こうとする彼を、ネクが必死になって止めた。
ネク
ネク
ダメに決まっているでしょう!?先程も言いましたが、今は魔王様とフェザーさんの時間なんです。邪魔したら悪いですよ
シスラ
シスラ
ちぇ〜、つまんないの〜
ユノン
ユノン
…………
渋々諦めるシスラの横で、ユノンはこのよくわからない感情に疑問を抱いていた。
昼食をとるために、ゼロとフェザーは近くの喫茶店に入った。そこそこ人がいたので、隅の席にしてもらう。
ゼロ
ゼロ
しかし、こういう場所は本当に久しいな
フェザー
フェザー
我も、昔主に連れて行ってもらったきりだ
最高だったと、フェザーは過去を思い出して涙が出そうだった。
ゼロ
ゼロ
さ、フェザーはどれにするんだ?
そばに置かれていたメニュー表をフェザーに向けて差し出してきた。どんな料理があったのか忘れたので、フェザーはじっくりとメニュー表を凝視する。ゼロも同じように覗き込んでいるので、自然と顔が近くなってしまう。
ゼロ
ゼロ
んー、やっぱオムライスか……
フェザー
フェザー
……………
フェザー
フェザー
(………………………最ッッッッ高……っ!!!!!
これは夢か!?夢なのか!?今まで普通に接していた自分が偽物みたいっ!!魔王様が…、魔王様がっ…。……我の人生に一生の悔いなし。全ての万物よありがとう)
フェザーの頭の中は舞に舞っていた。自分の恩人で魔王で親のゼロと2人きりで出かけている。今日はする機会はないが、今なら誰でも一瞬にして灰にできそうだった。
ゼロ
ゼロ
な、フェザーはどれにするんだ?
彼が何も選んでないことに気づき、ゼロが声をかける。
フェザー
フェザー
…え、あっ。…そうだな。………我はこのパスタでいいぞ
ゼロ
ゼロ
お前は草食だなフェザー。たまには肉も食べろ。じゃなきゃ筋肉つかないぞ
フェザーの体を心配したゼロは、彼の腕を掴んで筋肉がついているか触って確かめた。
フェザー
フェザー
んぁっ!!?
ゼロ
ゼロ
お、その反応は小さい頃のお前みたいで懐かしいぞ。触った感じ、やっぱり筋肉があまりついてないな。本当に昔のお前だ
ゼロが過去のフェザーを思い出してくすりと笑う。それを見て張本人のフェザーは顔から火が出そうだった。
フェザー
フェザー
(……っ、まだ素は隠しておこうっ!!!)
不意打ちで触られてしまい素の声が出てしまう。それはフェザーにとっては困ることだった。これまでのかっこいいクールビューティが全て水の泡になってしまうかららしい。
フェザー
フェザー
(笑ってくれたのは嬉しかったが…、あれではダメ。……………魔王様って、我の記憶が昔の我で止まってるのかな…)
不意に、そんなことを考えてしまった。もちろん今のフェザーのことは見てくれているのだが、まだ子供扱いされているような。子供の頃に似た反応をした方が、ゼロはよく笑う。

振り返れば確かに多かったなと納得したフェザー。でも、子供の頃の自分に負けている気がしてすっきりしなかった。
フェザー
フェザー
…なぁ主。我が好きな遊びって何かわかるか?
ゼロ
ゼロ
ん?えっと確かかくれんぼだよな。お前隠れるの上手いから見つけがいがあったぞ。またやろうな!
にこやかな顔でかくれんぼに誘ってくる魔界の王。こんな魔王は今までいただろうか。相手が自分の子供だからなのか、全てが緩い。

そんな彼を見て、フェザーは噴き出しそうになるのを必死に堪えた。
フェザー
フェザー
(……か、可愛いぃぃぃ!!これのどこが魔王なんだ!?いや魔王だけど!すいません!!)
思わず抱きしめたい衝動に駆られたが、ゼロがこの考えではいけないと思ったので、自分の腕を掴んでいたゼロの手を握り返して妥協する。
フェザー
フェザー
…我が主。我はもうかくれんぼはやらないぞ…
ゼロ
ゼロ
え、そうなのか?じゃあ今は何をしているんだ?
フェザー
フェザー
くくく、そうだな。我は今、強大な魔力を使って魔法陣を生成し、悪魔を召喚するための特訓に全てを捧げている…
ゼロ
ゼロ
悪魔…、あぁ!もしかして従魔召喚か?
従魔召喚。主人の血と魔法を代償として自分の従魔を召喚する儀式だ。従魔は悪魔だけではなく、吸血鬼や魔獣。時には人間だって召喚される。しかし、人間が来る確率は1番低い。
フェザー
フェザー
まぁ、従魔召喚と言ってもいいか。とにかく、我は悪魔を召喚するべく特訓をしているのだ!
ゼロ
ゼロ
おお…!凄いじゃないかフェザー!俺は嬉しいぞ!
ゼロ
ゼロ
だが、従魔召喚はかなりの上位魔法。フェザーにできるのか…?
挑戦してくれることは純粋に嬉しかったが、ゼロは彼に上位魔法が扱えるのか不安になった。失敗するとかなり体の負担が重くなる。

しかし、そんなゼロの心配を吹き飛ばすように、フェザーは生き生きと言葉を発した。
フェザー
フェザー
この我を誰だと思っているのだ?
フェザーが今度は両手でゼロの手を強く握る。それだけで、フェザーの漲る生命力を感じられた。
フェザー
フェザー
我は、魔王の子だ。絶対に成功してみせる。願っていてくれ、魔王様
宣言したフェザーはとても滾っており、眼帯越しでも眼から炎が燃え盛っているのがわかった。

そんな彼を見て呆気に取られたゼロだが、その後子の成長を実感する親の柔らかい顔をした。
ゼロ
ゼロ
……あぁわかった。俺は今回、応援へ回らせてもらう。子の、フェザーの成長を願ってな
フェザー
フェザー
…あぁ。よろしく頼んだ
固く結ばれた約束が、親子を繋いだのであった。
ゆるだら公
ゆるだら公
どうも、ゆるだら公です
ゆるだら公
ゆるだら公
色々なイラストを載せましたので是非

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