__街 レヴェルリー
ゼロとフェザーが今回足を運んだ場所は、賑やかで活気のある街、レヴェルリーだ。この街は頻繁に祭りや宴などの催しが行われている。そのお陰で街は常にお祭り状態だ。
そんなキラキラ輝いている街の景色や人々を眺めながら、2人はこの街を堪能していた。
貧民街の隣町の人たちに姿を覚えられているので、なるべくその近くを避けたかったゼロは、貧民街から遠いレヴェルリーを選んだのだろう。もちろん。フェザーのことも考えての選択だ。
フェザーは大丈夫なのだが、ゼロがいつものまま外を出ると、必ずと言っていいほどにいくつもの街から人が溢れ出し騒動になる。だからゼロは貧民街に行った時のように服装を変え、帽子でなるべく顔を隠しているのだ。
そのことで謝ってきたのにフェザーは少し驚いたが、何ともなかったように笑った。
久しぶりの2人での外出に、ゼロは気まずくならないか不安を抱いていたが、どうも心配しなくてもよさそうだ。話せば話すほど、心が軽くなるのを感じた。
その親子を、陰ながら見守る。いや、観察している者が3人。
尊敬しますと、ネクが輝きの目を向ける。一方シスラは、少しつまらなそうにしていた。鬼の無言を期待していたのだろう。
その中で、1番乗り気だったユノンは、ずっと静かに2人を眺めていた。その背景は、どこか寂しげで、どこか小さな怒りが混じっているように感じた。
ポロリと漏れた言葉に、暇そうにしていたシスラが反応する。しかし、行こうとする彼を、ネクが必死になって止めた。
渋々諦めるシスラの横で、ユノンはこのよくわからない感情に疑問を抱いていた。
昼食をとるために、ゼロとフェザーは近くの喫茶店に入った。そこそこ人がいたので、隅の席にしてもらう。
最高だったと、フェザーは過去を思い出して涙が出そうだった。
そばに置かれていたメニュー表をフェザーに向けて差し出してきた。どんな料理があったのか忘れたので、フェザーはじっくりとメニュー表を凝視する。ゼロも同じように覗き込んでいるので、自然と顔が近くなってしまう。
フェザーの頭の中は舞に舞っていた。自分の恩人で魔王で親のゼロと2人きりで出かけている。今日はする機会はないが、今なら誰でも一瞬にして灰にできそうだった。
彼が何も選んでないことに気づき、ゼロが声をかける。
フェザーの体を心配したゼロは、彼の腕を掴んで筋肉がついているか触って確かめた。
ゼロが過去のフェザーを思い出してくすりと笑う。それを見て張本人のフェザーは顔から火が出そうだった。
不意打ちで触られてしまい素の声が出てしまう。それはフェザーにとっては困ることだった。これまでのかっこいいクールビューティが全て水の泡になってしまうかららしい。
不意に、そんなことを考えてしまった。もちろん今のフェザーのことは見てくれているのだが、まだ子供扱いされているような。子供の頃に似た反応をした方が、ゼロはよく笑う。
振り返れば確かに多かったなと納得したフェザー。でも、子供の頃の自分に負けている気がしてすっきりしなかった。
にこやかな顔でかくれんぼに誘ってくる魔界の王。こんな魔王は今までいただろうか。相手が自分の子供だからなのか、全てが緩い。
そんな彼を見て、フェザーは噴き出しそうになるのを必死に堪えた。
思わず抱きしめたい衝動に駆られたが、ゼロがこの考えではいけないと思ったので、自分の腕を掴んでいたゼロの手を握り返して妥協する。
従魔召喚。主人の血と魔法を代償として自分の従魔を召喚する儀式だ。従魔は悪魔だけではなく、吸血鬼や魔獣。時には人間だって召喚される。しかし、人間が来る確率は1番低い。
挑戦してくれることは純粋に嬉しかったが、ゼロは彼に上位魔法が扱えるのか不安になった。失敗するとかなり体の負担が重くなる。
しかし、そんなゼロの心配を吹き飛ばすように、フェザーは生き生きと言葉を発した。
フェザーが今度は両手でゼロの手を強く握る。それだけで、フェザーの漲る生命力を感じられた。
宣言したフェザーはとても滾っており、眼帯越しでも眼から炎が燃え盛っているのがわかった。
そんな彼を見て呆気に取られたゼロだが、その後子の成長を実感する親の柔らかい顔をした。
固く結ばれた約束が、親子を繋いだのであった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。