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第63話

まるで水槽の底
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2025/12/29 10:29 更新
甲斐田柴音
よりによってこのタイミングで出てくるなんて相変わらず迷惑な人格だよね…
裏犬飼
おい、新人。
お前の意図は何だかよく分かんねぇが…
まさかこのまま呑気にここに残れるとは思ってねぇよな。
あなた
そうですね…できればもう少し泳がしておいてほしかったですが、あなたはそれを許さない。そうでしょう?
裏犬飼
まぁそういうことだ。
犬飼さんは俺に近づくと耳元で低く囁くように言う。
裏犬飼
できんだろ?幻影ライブ。
見せてみろよ。今、ここで。
土佐凌牙
あなたの幻影ライブ…?
裏犬飼
もう正体は分かってんだよ。
Aquadreamerのゴーストライター。
お前の力は相当なもんだろ。まさか今更
拒否しようなんて思ってねぇよな。
あなた
…わかりました。
犬飼さんの望みならば、俺は何でもしますから。
そう言って俺は服のポケットの中から一つのペンダントを取り出した。銀色のメタルがキラキラと反射する。
御子柴賢太
ファントメタル…
あいつずっと隠してたのかよ…!
あなた
隠すなんて人聞きの悪いこと言わなでよ。
僕はずーっと大事に待ってたんだ。
本物のAquadreamer、いや兄さんの形見を。
あなた
本当はもう二度と使わない予定だったんだけどなぁ…
でも仕方ないよね。犬飼さんの頼みなんだから。
そう言って俺はメタルに一つキスを落とした。
あなた
ごめんね、兄さん。使わせてもらうね。
ブワッと目の前に幻影が広がる
暗くて静かな水の底、不気味なはずなのにどこか安心感がある
水面から反射した光がキラキラと降り注いでまるでどこか違う世界のようだ
生温かい感触が頬を撫でて溶けていく
御子柴賢太
(ああ、そうか。初めて会ったあの時から違和感はあった。なんで今まで気づかなかったんだよ。こいつは俺らとは正反対の存在だ。)
甲斐田柴音
(俺たちよりずっと余裕があって強かでそれでいてどこにも隙なんてないんだ。これはどうあがいても勝てないわけだね。)
歌声は胸を貫くように鋭くてでも酷いくらい優しかった
決して明るいとは言えないが暗いわけでもない
土佐凌牙
(コイツ…こんな曲作ってたんだな…)
力の限りを注ぎ続けるかのように歌った
これが最後の俺の幻影ライブだから
裏犬飼
(やっぱり…コイツは危険だな。得体の知れない気持ち悪さを優しさの雰囲気ですべて誤魔化しきっている。ゴーストライターとは言えどここまでスキルがあればParadox Liveに出場しても十分に戦えただろうに…)
あなた
どうでしたか?俺の幻影は。
君たちには及ばないけど…中々すごいでしょ?
甲斐田柴音
はは…よく言うよ…
あんなの見せられたらね…あんたが敵じゃなくて良かったとさえ思っちゃったよ。
あなた
それは嬉しいなぁ…ありがとう。
土佐凌牙
…おい、あなた。
なんかお前、疲れてねぇか?
あなた
あはは…久々だったから体力使っちゃったのかもね。
御子柴賢太
俺とラップバトルしたときは息切れすらしてなかったくせに。やっぱ年なんじゃねぇの?
あなた
はは…そうかもね…ゲホッ
土佐凌牙
お…おい…
あなた
大丈夫ちょっと咽せただけゲホッ…
ビチャッと嫌な音が響く
床が真っ赤に染まっていく
甲斐田柴音
吐血…!?あなた!すぐに救急を…
あなた
ごめん…大丈夫だよ。メタルの副作用だしゲホッゲホッ
御子柴賢太
おい!お前もうしゃべんな!
いいから安静にしろって!
あなた
あはは…優しいなぁみんな。
次の瞬間ぐらっと視界が渦巻いた

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