第23話

番外編【💜🩷】
6,799
2024/05/26 10:49



【2人だけの空間】







放課後。

自習室の前の廊下にある 自販機の前に立つ

M
すちくん どーせまた抹茶ラテ買ったんやろ?w
S
だって美味しいんだもん
飲んでみる?
M
ええの!?飲む飲む


丁度 先程ここで買ったであろう 抹茶ラテを持って
楽しそうに喋る2人。


片方は、同じクラスのみこと。

もう片方は....確か、緑瀬 すち


みことの中学からの幼馴染と聞いたことがある


.....あと、 いるま が去年同じクラスだったらしい。


L
(てか あれ間接キスじゃん....)

あんな青春みたいな出来事を真横に、

俺は1人で てきとーに水を買う




そのまま水を振り回しながら

自習室を覗くと、誰の姿も見えなかった


 
L
(ラッキー♪
今日ここ使っちゃお)

教室には何人か残っていたので、

静かな自習室で宿題をしようと
バッグを背負い直して 自習室の扉を開ける



L
.........


俺の定位置である 窓側の席へ向かうと、

その隣の席に いるまが座っていた。


幸い、向こうはイヤホンをつけていて
俺には気づいてなかったみたいだった。


L
(やっぱ、帰る....?)



いるま.....紫乃いるま は、今年同じクラスで

俺の後ろの席に座っている。


本当は 小・中・高 と幼馴染だけど

中学の頃に「付き合ってる」とか「喧嘩ップル」
なんて周りから囃し立てられてから

気まずくてお互いに話さなくなり、離れていった。


まさか高校も一緒だとは思わなかったけど、
1年の時はクラスも離れていたため

もう二度と あいつとは関わらない気でいた。



.....たぶん、向こうも そう思っていた。





I
『...家の方向同じだろ、帰らねーの?』


クラス替えをしてから1ヶ月弱。

初めて あいつから話しかけてきた


L
『え、あ.....うん、帰る』


もともと 家までは電車で10分で着く距離だし

話す話題もなく、お互い無言のまま 家に帰った。



隣に居るのに、居ないような

奇妙な感覚だった。



L
......

そんな少し前のことを思い出しながら、

俺は いるまの座っている席の隣に 荷物を置く


I
....?  あ、
I
らんじゃん
L
....うん、俺

「らんじゃん」


と言ってきたその声は


俺が来たことに対して 喜んでいるのか
嫌に思っているのか よく分からないトーンだった


L
なに聴いてんの?
I
これ?好きな歌い手の新曲
I
聴く?
L
聴きたい

いるまのイヤホンの片側を渡され、耳につける


有線イヤホンだから、自然と距離も縮まって
なんとも言えない感覚に陥る


L
(.....恋愛ソングかよ)

聴こえてきたのは、弾けるような可愛らしい 歌声と
甘酸っぱい歌詞。



ちょうど 教室の、隣の席の人を舞台にしているのか

それっぽいニュアンスの歌詞が耳に入ってくる


L
(....隣の席 いるまじゃん。気まず)

相手はどんな顔をして どんな気分で
この曲を聴いているのだろう



チラッと横を盗み見ると、やっぱり普段と変わらない
顔で こっちなんて気にしてないみたいで。

そんな彼に、何故か少しだけ落ち込む自分がいる










曲がエンディングに差し掛かり、そのまま
イヤホンが無音になる


L
恋愛ソング聴くとか、珍しいね
rapばっか聴いてると思ってた
I
たまには新しい風ってやつ

そんなタイミングを見計らってか、

少し開いた窓から 暖かい風が制服を通り抜ける


I
勉強すんだろ?
誰も居ねーし、捗るんじゃね
L
え、いるまはしないの?
I
俺は静かな空間で聴きたかっただけ
I
もう帰るわ
L
....そっか
I
ん、じゃな




L
......まって!!

突然大声を出したせいで いるまも目を少し見開く

L
家の方向一緒じゃん、帰ろ


I
....勉強は?
L
この後 ファミレス行ってやる
L
いるまも来る?
I
....w 着いてってやるよ
L
やったーいるまの奢りね(同時
I
お前の奢りな(同時


L
.....え?
I
......ん?


しばらくお互い無言になってから、

また同じタイミングで笑う


L
ははっw....何やってんの俺らw
I
ほんとw 人居なくてよかったわw



あー、なんか



久しぶりかも。この感覚



L
やっぱ幼馴染って強いよな
I
何今更w
L
いや別に?


久しぶりに笑った彼の顔を見た。


久しぶりに 彼と笑い合った。


久しぶりに彼と話した。




たったそれだけで、俺の心は こんなにも軽くなる


 
L
ねぇ、今度 体育祭でバスケあるじゃん
I
あ?あぁ、ある
L
ちゃんと応援するね
I
.....勝手にしろ
L
はいはい勝手にしますよー
I
俺だけ見とけよ
他の奴応援したら許さんからな
L
なにそれ、カッコよ
I
は?だまれ
L
ひどっ!w
I
いつものことだろw





何気ない青春のひと時でも

俺といるまの 2人だけの空間は

他のどんな場所よりも 居心地が良かった。


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