第28話

🧊
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2025/08/10 12:39 更新




あなた
お兄ちゃん。
草薙 伯玖
はい。
あなた
私、怪我で立つのも一苦労だと思って
ご飯を持ってきたんですが。



窓から暖かい日差しが降り注ぐホタルビの一室。
私の目線の先で胡座をかく兄には、
骨折したとは思えない綺麗な足が生えていた。

草薙 伯玖
グールの回復力って凄まじいもんでね。…で、
心配してくれたんだな? おまえさん。


そう意地悪な笑みを浮かべる兄の表情に、
苦痛さは一ミリさえも感じられない。
そんな表情に安堵か笑いか、
「ふ」と小さく吐息のようなものが漏れ出た。

あなた
心配したよ。…だから、よかった。
あなた
よかったら、朝ごはん食べる?
買いに行くのもいいんだけど、
草薙 伯玖
食べる。あなたが作ってくれたんだろ?
あなた
…… 自信はないです。
草薙 伯玖
大丈夫。お兄ちゃん、
あなたの手料理ならなんでも食べるから。


自信が溢れ出るその笑顔に
心臓を射抜かれてしまったからには、
私は兄に料理を差し出すしかない。

最近始めたぬか漬けの成果であるお漬物と、
白ご飯にお味噌汁。そして鯖という、
朝にしては少し量が多いメニューであるが、

グールである兄は
よく食べるだろうと予想した結果である。
残ったらまぁ、私のお弁当にでもすればいいだろう。


草薙 伯玖
今日のご予定は?
あなた
特待生さんに謝罪しに行きます。
菓子折りは購買で買って。
草薙 伯玖
おれのお姫様は随分礼儀正しいようで…
特待生も気にしてないと思うけどな。
あなた
気にしてないとしても、
謝らなきゃいけないなって。
あなた
私のあの態度は悪かったから…。
お兄ちゃんも、見てたなら分かるでしょ?
草薙 伯玖
いーや? あの状態のおまえさんにしては、
そりゃもう優しかったと思いますよ。
草薙 伯玖
お兄ちゃんのこと大好きだもんな?
あなた
うん、大好きだよ。


私はその言葉を否定するつもりもないことを、
兄は誰よりわかっているはずなのに。

私がそう言ってのけると、
兄は一瞬固まって、顔を逸らした。

草薙 伯玖
…… あんたには勝てないわ、おれ。
あなた
えへ
草薙 伯玖
あんまり可愛いことしないでくれよ。
あなた
………


兄の声が、好きだ。
その少し低い声が鼓膜を揺らす度、
言いようのない幸福感に包まれる。

それなのに、そんな大好きな声で
そんな言葉を言ってしまえる兄に勝てないのは、
いつだって私なのだろう。
私は顔が熱くなる感覚を必死に誤魔化して咳払いをした。

あなた
…お兄ちゃんも、
草薙 伯玖
ん?
あなた
あんまりかっこいいこと、
女の人にしないでね。




______ あ、言っちゃった。

心の中で抑えておくはずだった言葉が、
ぽろっと外にこぼれてしまったのだ。
一瞬にして背筋が冷えて、冷や汗がたらりと垂れる。

あなた
ごめ、あの、嘘、冗談___


ダンっ、と、ちゃぶ台が叩かれた。


草薙 伯玖
…… あんた、どれだけおれが
おまえさんのこと好きか、分かってないだろ。
あなた
( あ、怒った顔もかっこいい… )


口角こそ上がっているものの、
額には青筋が浮かんでいる。
そんな表情にドキッとしたのは、
はたして恐怖からか、ときめきからか。

あなた
お、お兄ちゃん、えっと、私、
もう行かなきゃ……


だとしても、今はまずい。なんかやばい。

兄から発される雰囲気に、
私は思わず後ずさってそう言い訳を並べても、
きっと兄には通用しないのだろう。

兄はそれはもう格好よく微笑んで、口を開く。


草薙 伯玖
いいさ、今は逃がしてやるよ。ただ、




草薙 伯玖
帰ってくんの、お兄ちゃん待ってるからな?


にこ、と微笑む兄の顔は格好いいはずなのに、
その声には威圧感が滲んでいる。
「いってらっしゃい」といういつも通りの兄の声で、
私は逃げ出すようにホタルビを出た。


  どうやら、これはなんともマズイことになったらしい。


  ☆ 今回のお兄ちゃんブチ切れポイント ☆

「あんまり可愛いことしないでくれよ」

「あんまりかっこいいこと女の人にしないでね」
( 激可愛い発言 )


という、可愛すぎる妹を持つ兄の苦悩を
何一つ分かっていない妹への、
理不尽すぎる怒り…つまり八つ当たりでした。

この八つ当たりすら妹なら受け入れてくれることを
理解していてやっているので、尚更タチが悪いです。




  次回(またはその次回かそのまた次回)
夢主、ついに(兄の愛を)分からせられる____!?☆

デュエルスタンバイ!

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