窓から暖かい日差しが降り注ぐホタルビの一室。
私の目線の先で胡座をかく兄には、
骨折したとは思えない綺麗な足が生えていた。
そう意地悪な笑みを浮かべる兄の表情に、
苦痛さは一ミリさえも感じられない。
そんな表情に安堵か笑いか、
「ふ」と小さく吐息のようなものが漏れ出た。
自信が溢れ出るその笑顔に
心臓を射抜かれてしまったからには、
私は兄に料理を差し出すしかない。
最近始めたぬか漬けの成果であるお漬物と、
白ご飯にお味噌汁。そして鯖という、
朝にしては少し量が多いメニューであるが、
グールである兄は
よく食べるだろうと予想した結果である。
残ったらまぁ、私のお弁当にでもすればいいだろう。
私はその言葉を否定するつもりもないことを、
兄は誰よりわかっているはずなのに。
私がそう言ってのけると、
兄は一瞬固まって、顔を逸らした。
兄の声が、好きだ。
その少し低い声が鼓膜を揺らす度、
言いようのない幸福感に包まれる。
それなのに、そんな大好きな声で
そんな言葉を言ってしまえる兄に勝てないのは、
いつだって私なのだろう。
私は顔が熱くなる感覚を必死に誤魔化して咳払いをした。
______ あ、言っちゃった。
心の中で抑えておくはずだった言葉が、
ぽろっと外にこぼれてしまったのだ。
一瞬にして背筋が冷えて、冷や汗がたらりと垂れる。
ダンっ、と、ちゃぶ台が叩かれた。
口角こそ上がっているものの、
額には青筋が浮かんでいる。
そんな表情にドキッとしたのは、
はたして恐怖からか、ときめきからか。
だとしても、今はまずい。なんかやばい。
兄から発される雰囲気に、
私は思わず後ずさってそう言い訳を並べても、
きっと兄には通用しないのだろう。
兄はそれはもう格好よく微笑んで、口を開く。
にこ、と微笑む兄の顔は格好いいはずなのに、
その声には威圧感が滲んでいる。
「いってらっしゃい」といういつも通りの兄の声で、
私は逃げ出すようにホタルビを出た。
どうやら、これはなんともマズイことになったらしい。
☆ 今回のお兄ちゃんブチ切れポイント ☆
「あんまり可愛いことしないでくれよ」
↓
「あんまりかっこいいこと女の人にしないでね」
( 激可愛い発言 )
という、可愛すぎる妹を持つ兄の苦悩を
何一つ分かっていない妹への、
理不尽すぎる怒り…つまり八つ当たりでした。
この八つ当たりすら妹なら受け入れてくれることを
理解していてやっているので、尚更タチが悪いです。
次回(またはその次回かそのまた次回)
夢主、ついに(兄の愛を)分からせられる____!?☆
デュエルスタンバイ!












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!