誰に見つかることも無く寮に着いた私達はマイケルへ
「おやすみ」と告げてから、マイケルが部屋へと戻るのを見届けた。
就寝時間を迎えた談話室は相変わらず静かで、私達3人の呼吸の音だけが広がっていた。
そして、1度深く息を吸い込んだ私は、階段に向けていた視線を、後ろに立つフレッドとジョージに向けるべく、くるりと振り返った。
2人からの真剣な眼差しが、私へと向けられる。
2人から放たれた言葉は、凡そ想定していた物ではあったが、それでも全く驚かない。なんて事は出来なくて、私の鼓動は微かに早まり、思わず目を見開き口を噤んだ。
そう言った2人の瞳は決意に満ちていて、とても揺らぎそうに無いほど真っ直ぐだった。2人が"悪戯専門店"を開きたいと言うのは、今に始まった事じゃない。
数年前から、2人はそれが夢だと語っていた。
私は、2人がどれだけその夢に真剣なのかも…それがどれだけ大切なのかも…全て知っているつもりだ。
それなら、そんな私に出来る事は たった1つだろう。
私は、素直に笑顔を浮かべてそう言った。
すると、2人が同時に目を丸くし顔を見合せる。
ジョージのそんな言葉に、ほんの一瞬心が揺らぐ。
でもそれは、恋人のフレッドがホグワーツからいなくなるから…なんて子供の様な我儘な気持ちじゃなくて、いつも当たり前に隣にいてくれたフレッドとジョージ…
"2人が"いない学校生活を想像してしまったからだった。
そう言いながら、私は2人の手を片方ずつ優しく握った。
私の口から放たれる言葉には、強がりも嘘もなかった。
私がそう言って微笑むと、先程まで少しばかり強ばっていた2人の表情も緩み、私につられるように笑っていた。
「ありがとう、姫」そう告げる2人は、私の事を覆い隠す勢いで優しくも強く私を抱きしめた。「最高のお店にしてね」と言いながら、私も負けじと2人を抱きしめる。
私から体を離した2人の瞳を見つめ、私は明るく笑いかけてそう言った。「勿論」と息ぴったりな2人の返事が、静かな談話室へと僅かに響く。
お店を開く事も勿論大変だし1番重要だが、それよりも先にするべきなのは、学校を辞める事。
アンブリッジが、2人の退校を簡単に認めるかは分からないが…少なくとも悪戯好きな2人の事だ。自分から退校届けを提出して辞めるなんて"普通"の事はしないだろう。
そう思い聞いた私の問いに、2人は『待ってました』と言わんばかりの悪戯な笑顔を浮かべた。
そう告げた2人の表情は、いつになく楽しそうだった。
本当、この2人は心の底から悪戯を楽しんでいる。子供のように無邪気で有りながら、若干の企みを含んだ笑顔につられ、私も思わず顔が綻ぶ。
2人の悪戯は、想像の範疇を容易に超えてしまう。
だから、何を企んでいるのかは皆目見当もつかない。
だけど、"歴史に残る"と言われ 私も僅かにその悪戯へと期待を寄せていた。
ふざけ混じりにそう釘を刺してから、私は部屋がある2階へと向かった。フレッドとジョージも「何処か壊れてもすぐ直るさ」なんて本気とも冗談とも取れる事を言いながら、私の後を続き階段を上る。
互いの部屋の前まで来て、私達の足が同時に止まった。
いつもなら何の気もなく『おやすみ』と普通に挨拶を交わして部屋に入る。だけど気がつけば、私とフレッドは 殆ど同時に互いの事を呼び止めていた。
同時に振り返った私達は、目を合わせ口を噤んだ。
互いに言葉を発する事無く、なんとも言えない沈黙が僅かばかり続く。そして、その沈黙を破ってくれたのは、他でもないジョージだった。
ジョージが若干の呆れた笑みを零してから、そう言って部屋へと戻っていくと、再びその場に沈黙が広がった。
だけど、ずっとこうしてる訳にもいかない。それに多分、私とフレッドは少からず似た事を思っているはずだ。そう思った私は、フレッドに1歩近づき口を開いた。
瞳の中に、互いの少し不安げな表情が映り込む。
やっぱり、私たちが考えている事は同じかもしれない。
それが分かったからか、私は何となくそうした方がいい気がして、徐ろにフレッドの手を取ると優しくその手を握った。暖かな彼の体温が私へと伝わる。
フレッドとジョージが学校を去ってしまう事は、寂しく思っている。だけど、2人の夢の為だと思えば…卒業が少し早まったと思えば…少からず平気だった。
だから、何の心配もなく2人を応援出来ると思っていたが…自分でも不思議なくらい、フレッドが私の傍から離れ、他の大勢の人といる時間の方が長くなると考えた途端に、先程まで平然としていたはずの私の心に不安…と言うか、黒い靄のようなものが心臓を締め付ける感覚が押し寄せたのだ。
まるで、2年前のフレッドとアンジェリーナの関係を心配していた、あの時のような感覚が…。
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5年間、ホグワーツで共に時を刻んだフレッドとジョージ、そしてあなたちゃん。そんな時間が、もうすぐ終わりを迎えてしまいそうですね🥲
更新も遅く、内容も少なくなってしまい申し訳ありません🙇♀️ 何度も申し上げている通り、失踪は致しませんので、どうか暖かく見守って頂けると幸いです🍀*゜
【総ハート数 💗】8,000個を突破致しました!!🎉
皆様、いつも応援本当にありがとうございます🙇♀️
これからも私情により、ゆっくりめな投稿にはなってしまいますが、どうか完結までお付き合い頂きたく思っております🕊
これからも応援の程、よろしくお願い致します⋆⸜❤︎⸝⋆
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。