第150話

Episode.148
844
2023/10/08 14:00




誰に見つかることも無く寮に着いた私達はマイケルへ
「おやすみ」と告げてから、マイケルが部屋へと戻るのを見届けた。

就寝時間を迎えた談話室は相変わらず静かで、私達3人の呼吸の音だけが広がっていた。

そして、1度深く息を吸い込んだ私は、階段に向けていた視線を、後ろに立つフレッドとジョージに向けるべく、くるりと振り返った。
あなた・アルース
それで?何か言いたい事があるんでしょ?
フレッド&ジョージ
フレッド&ジョージ
姫…
フレッド&ジョージ
フレッド&ジョージ
俺達、学校を辞めようと思う
2人からの真剣な眼差しが、私へと向けられる。

2人から放たれた言葉は、凡そ想定していた物ではあったが、それでも全く驚かない。なんて事は出来なくて、私の鼓動は微かに早まり、思わず目を見開き口を噤んだ。
フレッド・ウィーズリー
フレッド・ウィーズリー
逃げる為に辞めるわけじゃない
ジョージ・ウィーズリー
ジョージ・ウィーズリー
ずっと言ってた店を開きたいんだ
フレッド&ジョージ
フレッド&ジョージ
悪戯専門店を

そう言った2人の瞳は決意に満ちていて、とても揺らぎそうに無いほど真っ直ぐだった。2人が"悪戯専門店"を開きたいと言うのは、今に始まった事じゃない。

数年前から、2人はそれが夢だと語っていた。
私は、2人がどれだけその夢に真剣なのかも…それがどれだけ大切なのかも…全て知っているつもりだ。

それなら、そんな私に出来る事は たった1つだろう。
あなた・アルース
いいんじゃない?応援するわ ((ニコッ
私は、素直に笑顔を浮かべてそう言った。
すると、2人が同時に目を丸くし顔を見合せる。
フレッド・ウィーズリー
フレッド・ウィーズリー
止めないのか?
あなた・アルース
ふっ…止めて欲しいの?
フレッド・ウィーズリー
フレッド・ウィーズリー
ッ…いやッ……
ジョージ・ウィーズリー
ジョージ・ウィーズリー
いいのか?俺は未だしも、フレッドと残りの時間を過ごせなくなるんだぜ?
ジョージのそんな言葉に、ほんの一瞬心が揺らぐ。

でもそれは、恋人のフレッドがホグワーツからいなくなるから…なんて子供の様な我儘な気持ちじゃなくて、いつも当たり前に隣にいてくれたフレッドとジョージ…

"2人が"いない学校生活を想像してしまったからだった。
あなた・アルース
確かに寂しいわ…
あなた・アルース
フレッドだけじゃなくて、ジョージと残りの時間を過ごせなくなるのもね…
あなた・アルース
数え切れない程の時間を、このホグワーツで2人と過ごしたのよ?それが出来なくなるのは、すごく寂しい…
あなた・アルース
だけど、どの道2人は今年で卒業でしょ?
その卒業が、少し早まったと思えばいい…

そう言いながら、私は2人の手を片方ずつ優しく握った。
私の口から放たれる言葉には、強がりも嘘もなかった。
あなた・アルース
それに、お店を開くのはフレッドとジョージの大きな夢でしょ?モリーさんに反対されても、必ず叶えるって言い続けてきた
あなた・アルース
私は、そんな2人の夢を1番に応援したいの
私がそう言って微笑むと、先程まで少しばかり強ばっていた2人の表情も緩み、私につられるように笑っていた。

「ありがとう、姫」そう告げる2人は、私の事を覆い隠す勢いで優しくも強く私を抱きしめた。「最高のお店にしてね」と言いながら、私も負けじと2人を抱きしめる。
あなた・アルース
辞める事もお店も引き止めない。だけどその代わり、お店には直ぐに招待してね ((ニコッ
私から体を離した2人の瞳を見つめ、私は明るく笑いかけてそう言った。「勿論」と息ぴったりな2人の返事が、静かな談話室へと僅かに響く。
あなた・アルース
でも、どうやって学校を辞めるつもり?
本当にアンブリッジをカエルにするとか?
お店を開く事も勿論大変だし1番重要だが、それよりも先にするべきなのは、学校を辞める事。

アンブリッジが、2人の退校を簡単に認めるかは分からないが…少なくとも悪戯好きな2人の事だ。自分から退校届けを提出して辞めるなんて"普通"の事はしないだろう。

そう思い聞いた私の問いに、2人は『待ってました』と言わんばかりの悪戯な笑顔を浮かべた。
フレッド・ウィーズリー
フレッド・ウィーズリー
いい考えがあるんだ
ジョージ・ウィーズリー
ジョージ・ウィーズリー
ホグワーツの歴史に残るくらいの
フレッド&ジョージ
フレッド&ジョージ
最高に派手な悪戯がな ((ニヤッ
あなた・アルース
派手な悪戯?何するつもり?
ジョージ・ウィーズリー
ジョージ・ウィーズリー
それは…姫にも教えられないな
フレッド・ウィーズリー
フレッド・ウィーズリー
あぁ、当日までのお楽しみだ
フレッド&ジョージ
フレッド&ジョージ
ただ、期待して損は無いぜ ((ニヤッ
そう告げた2人の表情は、いつになく楽しそうだった。

本当、この2人は心の底から悪戯を楽しんでいる。子供のように無邪気で有りながら、若干の企みを含んだ笑顔につられ、私も思わず顔が綻ぶ。

2人の悪戯は、想像の範疇を容易に超えてしまう。
だから、何を企んでいるのかは皆目見当もつかない。
だけど、"歴史に残る"と言われ 私も僅かにその悪戯へと期待を寄せていた。
あなた・アルース
相当な悪戯を考えてるみたいね
楽しみだけどホグワーツは壊さないでよ?

ふざけ混じりにそう釘を刺してから、私は部屋がある2階へと向かった。フレッドとジョージも「何処か壊れてもすぐ直るさ」なんて本気とも冗談とも取れる事を言いながら、私の後を続き階段を上る。

互いの部屋の前まで来て、私達の足が同時に止まった。

いつもなら何の気もなく『おやすみ』と普通に挨拶を交わして部屋に入る。だけど気がつけば、私とフレッドは 殆ど同時に互いの事を呼び止めていた。
あなた・アルース
ねぇ、フレッド…
フレッド・ウィーズリー
フレッド・ウィーズリー
なぁ、姫…
同時に振り返った私達は、目を合わせ口を噤んだ。

互いに言葉を発する事無く、なんとも言えない沈黙が僅かばかり続く。そして、その沈黙を破ってくれたのは、他でもないジョージだった。
ジョージ・ウィーズリー
ジョージ・ウィーズリー
先に部屋に戻ってるぞ?
おやすみ、姫 ((ニコッ
あなた・アルース
ッ…おやすみ、ジョージ
ジョージが若干の呆れた笑みを零してから、そう言って部屋へと戻っていくと、再びその場に沈黙が広がった。

だけど、ずっとこうしてる訳にもいかない。それに多分、私とフレッドは少からず似た事を思っているはずだ。そう思った私は、フレッドに1歩近づき口を開いた。
あなた・アルース
どうかしたの?フレッド…
フレッド・ウィーズリー
フレッド・ウィーズリー
姫こそ…
瞳の中に、互いの少し不安げな表情が映り込む。
やっぱり、私たちが考えている事は同じかもしれない。

それが分かったからか、私は何となくそうした方がいい気がして、徐ろにフレッドの手を取ると優しくその手を握った。暖かな彼の体温が私へと伝わる。
あなた・アルース
あのね、私…2人の事凄く応援してる
だから、止めるなんて事はしないんだけど
あなた・アルース
でも、ダイアゴン横丁にお店を開くなら…当然、色んな人が来るはずでしょ?
色んな…魔法使いや、魔女達がッ…
あなた・アルース
2人のお店は、きっと大人気になるだろうし 大勢お客さんが来ると思うの!えっと…だからそのッ…
フレッドとジョージが学校を去ってしまう事は、寂しく思っている。だけど、2人の夢の為だと思えば…卒業が少し早まったと思えば…少からず平気だった。

だから、何の心配もなく2人を応援出来ると思っていたが…自分でも不思議なくらい、フレッドが私の傍から離れ、他の大勢の人といる時間の方が長くなると考えた途端に、先程まで平然としていたはずの私の心に不安…と言うか、黒い靄のようなものが心臓を締め付ける感覚が押し寄せたのだ。

まるで、2年前のフレッドとアンジェリーナの関係を心配していた、あの時のような感覚が…。





















✄-------------------‐✄

5年間、ホグワーツで共に時を刻んだフレッドとジョージ、そしてあなたちゃん。そんな時間が、もうすぐ終わりを迎えてしまいそうですね🥲

更新も遅く、内容も少なくなってしまい申し訳ありません🙇‍♀️ 何度も申し上げている通り、失踪は致しませんので、どうか暖かく見守って頂けると幸いです🍀*゜


【総ハート数 💗】8,000個を突破致しました!!🎉
皆様、いつも応援本当にありがとうございます🙇‍♀️

これからも私情により、ゆっくりめな投稿にはなってしまいますが、どうか完結までお付き合い頂きたく思っております🕊

これからも応援の程、よろしくお願い致します⋆⸜❤︎⸝‍⋆

プリ小説オーディオドラマ