午前8時、教室のドアを開ける
朝からクスクスと笑い声が聞こえる
頭から水をかぶっていた
ああ、まただ、着替えないと
透けたブラウスから下着が見える
髪からは水が滴り、床には水たまりができていた
高校に入ってからは大丈夫だと思ったのに、なんて
そんなことを頭の中で繰り返していた
入学初日から僕はきっと何かを間違ったのだろう
そしてクラスではそんな僕は浮いてしまった
あなたは嫌がらせを受けるたびクラスにも嫌がらせをする習慣がついた
先生はきずかない、いや見て見ぬふりをしていた
そんなふうにして、
あなたは及川さんと岩泉先輩以外、
信じられなくなっていった
そんな僕にも目にとまる物があった
バレーボールのマネジャーの仕事だった
中学では女バレに入っていて、
マネの存在すら知らなかった
これならと思い、無意識にクラスメイトに隠れて入部した
今でもこの選択は間違ってないと思う、
少し辛い時期もあったが、マネ業をこなしていった
でもやはり、人への恐怖は捨てられていなかった
今でも、あなたへの嫌がらせは続いている
そんなこんなで、2年生になる
久しぶりに話す後輩
影山はとうに僕の背を越していて、
目つきも鋭くなっていた
本当は青葉に行きたかったけど、
及川さんファンが多すぎるから
だから結構、牛島さんのいる白鳥沢以外なら、
青葉に近ければ正直どこでもよかった
飛雄の顔がぱぁっと明るくなる
…人見知りなのかな?(失礼)
飛雄の明るい顔にやられてしまいそうだ
それくらい、僕には余裕がなかったんだと思う
飛雄…目ざといなあ、誤魔化しづらい
冬でも半袖だったくらい僕は暑がりだった
今はもう長袖になれてしまったけれど
内心は複雑で、後輩に心配されたくないのと同時に
気づいて貰えたことに安心している自分もいた
でも、いまは飛雄と距離を置きたかった
元気があってよろしい
ああ…なんか後輩見てると泣けてきた
あなたが涙を流したことで飛雄は焦っていた
それもそのはず、好きな人、
それも先輩が泣き出したら、誰だって焦るだろう
影山はどうしたらいいのか分からず
あなたの顔を覗き込む
影山はその顔に不意にも胸が高鳴ってしまった
するとその時、後ろから声がした
急に声が聞こえ影山とあなたはドキッとした
影山はそんな日向の言葉に反応し、回し蹴りをした
日向はそれを避け、影山に反抗する
どうやら2人は中が余りよくないようだ
そうこうしているうちに、予鈴が鳴る
そうやって2人は教室に戻っていった
あなたは一人になった途端、
気持ちが重くなった気がした
またあの教室に戻ることになる
それがとても憂鬱でしかたなくて、
信用している及川と岩泉と居られないことが不安で仕方がなかった
でも、夜に及川とバレーの作戦会議するときだけがあなたにとって幸福の時間であり、
そのおかげで高校もめげずに行っていた
及川と違う高校にわざわざ入った理由は及川がいじめに気づいたからでもあった
学年も違うため絶対守れる自信がないためだったのだろうか、だがそれも今となっては関係ない
いつまでも続き、繰り返される、嫉妬や羨ましさからの嫌がらせや陰口はあなたを追い込んでいった
そしてまた、教室のドアを開ける
今回は、体操着が何処かへいってしまったようだ
そうやって誰のせいにもせずあなたはまた1人で抱え込んだのだった
次の時間は体育で、体育担当の先生はとても厳しい人だった
あなたは急いで体操着を探しに行くしかなかった
独り言を呟きながら体操着が隠れてそうな場所を探す
見つかったことに安心したのもつかの間だった
表面は砂にまみれ、枯れ葉がたくさんついていた
あなたの中で今回はまだマシな方だった
枯れ葉がと砂をはらえばなんとかなるくらい…
それでも、少し胸が締め付けられた
あなたはその場で着替え運動場へ走った
途中でコケたと言えばなんとか誤魔化せるだろう
そんなふうに、次を考えているあなたは
まだ希望を捨てていないのだろう
体育前に少し息が上がった
まだ3月の初め、体が温まりちょうどいいと、あなたはポジティブに考える
大きな声で先生に謝った、が
「何回目だ」と怒鳴られてしまった
あなたは何度か体操着忘れを装ったり、
遅れたりすることが1年から多かったため、
先生には呆られかけていたのだった
また周りからクスクスと笑い声が聞こえる
先生はまた「静かにしろ」と怒鳴る
そうするとすぐ周りが静まった
「やる気がないなら参加するな」
何度言われたこの言葉がまた耳に響く
あなたはなぜかわからないまま胸が苦しくなった
そう真っ直ぐな目で先生に言う
先生は毎回あなたに負け、体育を始める
内容はハードル走
陸上の中であなたが一番得意な種目だ
先生が笛の準備をする
ピッ!と笛がなったと同時に
あなたは力強く地面を蹴り走り出した
クラスメイトよりも圧倒的に差をつけ
綺麗なジャンプとスピードで走り切った
そんな姿を窓から誰が見ていたのだった
5時間も終わり、放課後になる
飛雄がいないと思ったあなたは周りを見渡した
「1年と土曜日試合をする」という話が聞こえてきた
委員会、というより学年委員である
そして、仕事はよく回ってくるため早朝に鍵を開ける事だけの方が多い
あなたは清水先輩は優しいのは分かっているが、
その優しさが怖くて、
心を開ききる事が出来ていなかった
それを清水先輩も察していたのだろう
それでも変わらず接していた
あなたのことを一番よくわかっていた












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!