私/僕はもともと体が弱かった。
余命宣告を受けた。
一度だけでいいから、普通の生活がしてみたかった。みんなと同じ、普通の生活を。
前にテレビでやってたことを思い出す。
確か、死んだら転生できるとかなんとか…
私/僕の覚えてる記憶はそれだけだ。両親の記憶もないし、何かしたという記憶もない。
ただ、そのテレビで印象に残ったことを、実験してみようと思った。
フェンスをまたいで此の世と彼の世の縁に立つ。時間だけが過ぎていくこの世の中で、自分ができることは………
私/僕は病院の屋上から飛び出した。
きっと、飛べると、自分の体を信じて……
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!