jr side.
昼休み。
教室の窓際、パンをかじりながらスマホをいじってたところに、ふいに隣の席のきょもから声がかかる。
「ねえ、樹」
「んー?」
「昨日、駅の近くの坂道でさ。誰かと一緒に歩いてなかった?」
「……え?」
指が止まる。心臓も、少しだけ跳ねた。
「男の人?ちょっと背高くて、黒いパーカー着てて……たぶんだけど、あんま高校生じゃなさそうな感じの」
がそう言いながら首を傾げる。
その描写に、思い浮かぶのは一人しかいない。
……北斗、か…
「……ああ、うん。知り合い」
「ふーん?知り合い、ね」
「なにその言い方」
「いや、悪い意味じゃなくて。てか、珍しいなって思ってさ。樹、あんまそういうタイプと絡んでるの見たことないし」
「そういうタイプって?」
「んー、大人っぽいっていうか……なんか空気違う感じ」
きょもは悪気なく言うけど、その言葉にちょっとだけ、胸がざわつく。
たしかに北斗は、同年代とは違う落ち着きがあるし、どっちかって言うと距離を取るタイプだ。
けど、そんな北斗が自分とは並んで歩いてくれるっていう事実が、なんか誇らしかったりもする。
「……たまたま会っただけだよ、帰り道。ちょっと話してただけ」
「そっか」
きょもはあっさり引き下がる。
けど、なにか言いかけたような顔もしてた。
……見られてたんだ、俺ら
その“見られてた”っていう事実が、想像以上に心を揺さぶる。
バレたくないわけじゃない。けど、説明もできない。
まだ、何者でもないこの関係を、名前もつけられないこの距離を——
人に話せるようなもんじゃないって、なんとなく思ってしまった。
スマホの通知が光った。
北斗から。
《今日も帰り、コンビニ寄る?》
無意識に、少しだけ笑ってしまう。
……なんなんだろな、ほんと
そう思いながら、「行く」って返した。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!