※高校生パロ 配信部しかでません 他メンバーは匂わせだけ
※rksrメインにieli&mtup未満なんでも許せる人向け
chapter1:健気な少女は恋をする
毎朝、玄関で鏡をみて最終チェック。リボンは曲がってないかな、とか、寝癖ちゃんと直せてるかな、とか。そうやって満足いくまで確認したら、一歩踏み出して。今日こそは絶対伝えるんだって自分に誓って通学路を歩く。……だけど。
放課後の教室。HRも終わりクラスメイト達は各々部活や下校のために動き出す。そんな中、ぺしゃり、と呟きながら机につぶれるわたし。その姿を見止めた友人はその幼い顔に似合わないくらい険しい表情をして、隣の席の生徒の椅子をかっぱらって座る。ガタン、と動かす音は教室の喧騒にかき消された。
そう、もうこのやり取りも何回目だったか。それくらいわたしは同じ高校の、一つ上の先輩―――柊鳴ルカ先輩に話しかけようとして、失敗を繰り返していた。
……始まりは、ありきたりな話。引っ越しに合わせて受験した高校は、残念ながら誰も知りあいがおらず、入学式当日に初めて一人で学校へ向かった私は迷子になってしまい(だって道が工事で通行止めになるなんて知らなかったのだから!)、それを彼が助けてくれたっていうだけの話。
そう、それだけの話。……だけど一人ぼっちで心細かったわたしに、笑いかけてくれた。手を差し伸べてくれた。ハンカチでそっと頬を拭ってくれた。あの時のことはいつだって鮮明に思い出せる。本当に、本当に嬉しかったのだ。だから、ちゃんとお礼を言いたい、それだけなのに……
彼の周りにはいつも人がいるのだ。それは同級生も、先輩も、先生も皆が彼のもとに集まる。休み時間でも授業中でも放課後でも。たくさんの人に囲まれている彼を見ると、どうしても持ってきた勇気がしぼんでしまう。たった一回話しただけの私が行ったら、迷惑かな、なんて思ってしまって。
そう言って友人―――ウパパロンは豪快に座った足を組みなおす。あ、ちょっとスカートがめくれちゃう。指摘しても適当に流されるのでちょいちょいと直してあげながら、今朝の風景を思い出してため息がでた。
今でもはっきり思い出せる。上映前に入ってくる姿が見えただけだし、暗がりの中だったけど仲がよさそうに笑い合う姿はとってもお似合いだった。もし友人だとしても、絶対勝てないと思うくらいには。
……本当はわかってる。この気持ちがただ感謝しているだけじゃないってことは。一目ぼれ、だったのだと思う。別に、感謝を伝えるだけなら無理やりでも話すタイミングなんて作ればいくらでもあったのだ。なのに、それをしないのは期待しているから。嫌われたくないなんて下心を持ってるから。
わたしとウパさんの会話にぬるりと割り込む声。あんまりにも自然だったから返事をしてしまったけれど驚いて顔をあげる。そこには見覚えのない女の子が腕組みをしながら立っていた。さらりとした白髪を高い位置でツーサイドアップにし、片側には黄緑色のリボンをつけ、薄紫色のカーディガンを着ている。全体的に可愛い系にまとめている格好に対して、表情はツンとしていてちょっとだけ気後れしてしまう。……本当に誰?困惑する私をよそに、ウパさんはぱっと顔を明るくし立ち上がる。そのまま嬉しそうにバンバンとその子の背を叩いた。
戸惑いながらも問いかけたわたしの、横から答える声。ウパさんはニッコリと笑って続ける。
そこでレイラーさんは言葉を区切ってこちらをちらりとみる。品定めするような視線に思わず背筋が伸びた。そんなわたしを見て、レイラーさんはふっと小さく笑う。
そいうとレイラーさんはパチン、と綺麗なウインクをして出ていってしまう。次いで荷物を持ったウパさんも。残されたのはわたしだけ。……じわじわと実感がわいてくる。明日、先輩と話せる。お礼も、言える?
嬉しさとか、驚きとか、緊張とかで思わず叫んだ声は予想以上に大きくなってしまう。幸い、いつの間にか教室は一人だけだったので、文句を言われることはなかった。
chapter2:人気者の友人は恋をする
高校生になって1年ちょっと、勉強も部活も中学とは違う空気感にもすっかり慣れ新しい友人もできて。いかにも青春真っ盛りという時期。だけど俺は今、貴重な高校生活を少し埃っぽい部屋で、男3人で膝を付け合わせながら昼休みを過ごしている。
……さて、貴重な青春をこの狭い美術室で消費している今の状況を説明するには、どこから始めようか。まずは、目の前に座っている柊鳴ルカについてだろうか。スッと通った鼻筋、はっきりとした二重にミルクティー色の髪は癖がなく風が吹けばさらりと流れる。そこに平均より高い長身と好青年と誰もが言うであろう性格までついてくる。文武両道、才色兼備、そんな言葉が似合う彼と対照的に地味に陰キャをしている俺。そんな正反対な自分たちだが、ゲーム好きという共通点から接点が生まれ、何やかんや中学から今までつるんでいる。
そんな彼がどうしてこんなところで昼飯を食べているかって?……さっきも上げたように、柊鳴ルカはイケメンだ。おまけに性格も良い。その結果、彼は大層モテた。純粋な信頼的な意味でも、恋愛的な意味でも。だから彼の周りにはいつも人がいるし、休まる暇もない。もっと言ってしまえば余計な面倒事も引き寄せてしまう。例えば、一方的で暴力的な好意とか。すっかり参ってしまった彼が安らぎの時間を求めた結果生まれたのが、この避難所だった。
彩り華やかに作られた弁当(本人作)をつつきながら、目の前の友人はそれはそれは大きなため息を吐いた。その姿をもしクラスメイト達が見たら大層心配され、あっという間に人だかりができるだろう。が、あいにく俺は原因を知っているし、そもそもここにいるのはたったの3人だけなので、イケメンは憂う姿も様になるんだななんてどうでもいいことを考えていた。心ここにあらずな様子を見抜いたらしい。憂うイケメンこと友人―――柊鳴ルカは恨めしそうな視線を寄こした。
バン、と机を叩くヒナニキ。そんな姿を見て、クラスメイトは知ったら驚くだろうなと考えながら焼きそばパンに噛り付いた。
そんなせっかくの避難所。ようやくありつけた束の間の休息であるのに、彼を悩ませているのは、なんとも高校生らしいと言えるだろう恋煩いだ。……きっかけは、ありきたりな話だ。困っていた下級生を助けた。それだけの話。だけど、ありがとうと笑った笑顔に、たちまち一目ぼれしてしまったらしい。しかし残念ながら相手は入学してきたばかりの後輩。それなりの生徒数を誇るこの学校では、部活や委員会でも同じでなければなかなか交流も難しい。ましてやそれがたった一度話しただけの相手であれば尚更だ。
そう言って楽しそうに横やりを入れてくるのは、ここに居るもう一人であるメテヲさん。高校からの友人であり、この避難所を提供してくれている人物でもある。彼の所属している美術部は幽霊部員が多く、3年生に至っては受験も近づきすっかりいなくなってしまった。そこに適当な顧問(メインは強豪バスケ部だからしかたない)の導きも加わり、ちゃっかり部室の鍵を手に入れ自由を謳歌している。この部室である美術室は正確には旧校舎にある元美術室で、実質稼働していないに等しい美術部はこちらにおいやられたというわけで。でもって旧校舎なんてそうそう来る人もいない、まさしくヒナニキが逃げるのにもうってつけだったということだ。……そんな救世主であるメテヲさんは、好物であるじゃがりこをつまみながら笑っており、中性的な整った顔立ちを以てしてもその表情はからかいの色を隠せていない。
メテヲさんが言いながらじゃがりこを一本ヒナニキの前に持っていく。それを大した抵抗もなく食べるヒナニキ。……大分重症だな。それはメテヲさんも同じ気持ちのようで、自分からふっておきながら珍しく困った顔でこちらを見てきた。
ひそひそと二人で現れない解決策について話し合う。無意味な時間が消費され、今日も昼休みが終わるのだろう、そう思った時大きな音をたてて勢いよく準備室のドアが開け放たれる。
同時に聞こえたのは鼓膜が破れるんじゃないかと思うほどの大声。耳を塞ぎながら顔をあげると、そこには謎の3人組がいた。一番手前、おそらくドアを開けたのもこいつだろう。仁王立ちをするボブヘアの小柄な1年生。その後ろにはびくびくと中を見ている、同じく1年生であろう少女。
ひょこりと後者の少女が顔を出したとき、ヒナニキがそんなことを呟く。あの子てどういうことなん?と聞くのが筋だろうが、俺はそれ以上に一番後ろで頭を抱えている白髪の見知った顔―――年下の幼馴染、レイラーに気をとられてしまって。
ようやく口からでたのは負けず劣らずの間抜けな声だった。
chapter3:やっぱり二人は恋してる
iemonさんが口を開けたまま動かなくなっちゃったので、ここからはメテヲが引き継ごうかな。さて、平穏平和な(若干一名を除いて)美術準備室に、台風のような勢いがやってきて。知らない3人組が開け放たれた扉の先に立っている。いや、マジで誰なんだ?
呆然とする俺たちをよそに、先頭の少女はきょろきょろと狭い部屋を見回すと、ひなにいさんを視界に入れた瞬間また大声をあげ指差し、ずんずんと歩いてくる。片方の手は後ろでおどおどしてる女の子の手を引っ張って。うーん、明らかに前の子の方がちっちゃいのに堂々とした立ち振る舞いで大きく見えるな。
ひなにいさんは名前を呼ばれて戸惑いながら返事をする。その答えを確認すると、嬉しそうに笑って振り返った。……どうやら用があるのは、彼女ではなく後ろのレイマリと呼ばれた子の方らしい。戸惑う彼女をウパさん?とやらがグイグイと背中を押す。
なるほど?やあっと状況が読めてきた。もしかしなくてもこの子はひなにい愛しの後輩ちゃんってことだな。その子がお礼を言いたくてわざわざこんな旧校舎まで来てくれたと。え、これひなにい脈ありじゃね?
レイマリさんは前に押し出されて、しばらくもじもじしていたけれど、バッと顔をあげてひなにいさんの名前を呼ぶ。それが思いのほか大きな声で、ひなにいさんもつられてそこそこの声量で返事をする。二人ともガチガチに緊張していて、ちょっとおもしろいな。
うーん、もどかしい。ここで動かないでどうするひなにい。しかたないからメテヲ様直々に発破をかけてやるか。そんなのことを思いながらひなにいの肩に腕をかける。
俺の言葉に、なぜかレイマリさんが反応する。というより俺を見て?いや面識とかとくになかったはずだけど。何とか思い出そうと脳みその記憶領域を探そうとしていると、レイマリさんはとたんに顔を青くして頭を下げてくる。
レイマリさんが謝ると同時にウパさんがこちらをぎろりとにらみつけてくる。いやこわ……くはないな。きゅるきゅるな目で上目遣いされてるだけにしか見えん。というか彼女ってまた急に……あ?映画館?その単語で一つだけ思い当たる節がでてきた。そうすると芋づる式に真相も導き出され、とんでもない思い違いを生み出していることに気が付く。慌てて声をあげた。
訝し気なウパさんに必死に声をあげる俺。そのかいもあってとりあえず納得しらたしいレイマリさん。ほっとしたように笑い、思わずと言った風に言葉を漏らす。
小さな声。でも、それを聞き逃さなかったのがいつの間にか体制を立て直していたひなにい。ニコリ、と笑いながらレイマリさんに向き合う。
……ドタバタだったけれど、丸く収まりそうかな。俺のやらかし(いや俺悪くないけど)も良いスパイスになっただろ。そう思っていると、すっかり存在を薄れさせていた3人組の最後の一人―――白髪のツーサイドアップ娘がやれやれと言った顔で部屋に入ってきた。
その声に固まったままだったiemonさんが動き出す。
ふーん、こっちも面白そうじゃん。これがラブコメってやつ?いいじゃん青春っぽい。……これって、俺も参戦できるんかな。とりあえず、騒がしい少女の横にふらりと近寄った。
ぎゃいぎゃいと騒がしいレイラーの姿を初めて見た。こいつ、こんな顔するんだなって思う。でもって協力してくれた理由もわかった。とりあえず自分の役目は果たせたかな。幸せそうに笑うレイマリも、騒ぎながらも嬉しさを隠しきれてないレイラーも、ああ、恋してるんだなって思う。それに比べて私は……そこまで考えて、ため息が一つ漏れた。
声の聞こえた方へ思い切り顔を向ける。そこには、綺麗な顔でニコリと笑う先輩。間違いなく自分に向けられたであろう言葉を反芻して、じわじわと顔に血が上っていくのを感じる。絶対今の私、顔が真っ赤だ。今まで自分には関係ないと思っていたのに、もしかするともしかして?そこまで考えて、私のキャパシティーは限界を迎える。あふれ出した分は声になって飛び出した。
遠くで予鈴の音が鳴る。だけど、それは自分の声にかき消されて聞こえなくなってしまった。
chapter4?:傍観する二人も恋をする……?(幼馴染も!)
続きません












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。