第12話

本心
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2026/03/23 14:55 更新
sm side



リノさんに会いに行こうと思った瞬間、気づけばもう店の外に出て走り出していた。


店の鍵を閉めたかどうかも曖昧だけど、それも構わず真っ直ぐにリノさんの家に向かう。


リノさんの家に着き、インターホンを鳴らしてみたが家の中からは全く気配がしない。


眠るにはまだ早い時間なので、仕事か、もしくはどこかに出かけてるのかもしれないと玄関の前に佇む。



リノさんとの会話を思い出しながら、彼が行きそうな場所を考える。



何かリノさんに関わること‥



するとノートに書かれていたことを思い出した。



‥‥あ







リノさんにとっても、きっと僕にとっても大切な場所。


今度は海の方へ向かって走り出した。





ーー


月の明かりを頼りに海辺を探す。


夜の空気が、やけに冷たい。
でもそれ以上に胸の中のざわつきの方がうるさかった。

スンミン
……リノさん


きっとここに来れば会える。
はっきりそう思う。


ふと目をこらすと、波打ち際に立つ人影が見えた。


迷いは一切なかった

スンミン
リノさん!


声をかけると、その背中がわずかに揺れた。


一歩ずつ近づくと、その人は少し距離を取るように下がった。


僕達の間に距離が出来たことに胸が締め付けられる。


僕が傷つけてしまったんだから、避けられても仕方ない。
でも、体が先に動いていた。


ちゃぷん、と水の中に踏み込む。
冷たくて足元からジワジワ濡れていくけど、近づくのを止まれない。


スンミン
リノさん、そこにいて!


こんな言葉しか出てこないけど、でもリノさんのこととなるとそれくらい余裕がなかった。


水を蹴るようにじゃぶじゃぶと進むと、次第にリノさんの顔がハッキリ見えてくる。



ずっとずっと会いたかったリノさんが目の前にいる。
鼓動が速くなり、海の冷たさなんて吹き飛んだ。



スンミン
リノさん、待ってください


必死に手首を掴んだ。


リノさんは戸惑いで目が揺れているが、僕の目を見てくれている。


月明かりに照らされてハッキリするその表情をみて、胸の奥が一気に締めつけられる。


スンミン
……リノさんに、会いに来ました
スンミン
ちゃんと、話さなきゃって思って


逃げたのは僕の方。

三年という時間の重さに、勝手に押し潰されてリノさんを遠ざけた。


スンミン
ごめんなさい
スンミン
あんな態度とってしまって


リノさんは目を見開いてから、小さく首を横に振り、そして下を向く。


スンミン
実は僕、部屋にあったノートを見てしまったんです
スンミン
リノさんが僕を探してくれた三年間が綴られたノート


リノさんは、はっとした表情で顔を上げる。

スンミン
僕……それをみて怖かったんです
スンミン
リノさんが背負ってきたものが、重すぎて


リノさんの手首を掴む手に、少し力が入る。

スンミン
僕は、リノさんとのことも、何も覚えていないんです。でも
スンミン
確かにリノさんとの過去はあったと感じていて、なのに思い出せなくて
スンミン
全部リノさんに背負わせている自分が嫌で


言葉にするたびに、自分の不甲斐なさに胸が痛む。

スンミン
こんな奴が、リノさんのそばにいる資格なんてあるのかなって考えてました
スンミン
……でも


一度息を吐いてから、リノさんと視線をしっかり合わせる。
泣きそうなその顔から、目を逸らさずに。


スンミン
それでも、リノさんに会いたくてたまらなかった


もう、迷わなかった。

思い出せないだけでリノさんとの記憶が僕の中にきっと在る。

スンミン
‥ ‥好きです
スンミン
リノさんが、好き


正直に伝えたその瞬間、みるみるリノさんの目に涙が溜まっていくのがわかる。


リノさんの手が震えながら僕の手を握り返してくれる。


その反応が、どうしようもなく嬉しくて

スンミン
……今度こそ、絶対離れたくない


言い切ったあと、波の音だけがやけに大きく響いた


リノさんは、声が出ないのに何かを伝えようとしているのが分かる。必死にこっちを見ている目。


その目を見た瞬間、胸の奥が熱くなる。


記憶はないけど、この距離も、この空気も、この人のことも確かに知ってる。


一歩、近づく


波が、二人の足元を揺らす。


もう離したくなかった。


リノさんの手首をそっと離すと、両手で彼の頬を包む。

月の光に照らされるリノさんがとても綺麗で、思わず息をのむ。


リノさんの目がわずかに揺れ、
そしてゆっくり閉じられた。


触れそうで、触れない距離で一瞬だけ呼吸が重なる。


そしてそっと



リノさんの唇に唇を重ねた




一瞬だけの、触れるだけのキス



波の音も風も全部遠くなるくらい、その感触だけがはっきり残る。



ゆっくり離れると、リノさんの大きな目から涙が溢れている。
その儚い表情に、胸がぎゅっとなる。



スンミン
‥‥泣かせるつもりじゃなかったのに


小さく笑いながら、親指でそっと涙を拭う。

スンミン
これからはずっと
スンミン
ずっと一緒にいてください


今度は少しだけ長く、唇を重ねた。


月の光が水面で揺れて、二人の影が静かに重なっていた。






















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