チーノside
ルキナさんが歌い出した途端、信じられないことが起こった。
まず、大先生の脚の怪我が跡形もなく消え去った。
俺やシャオロンの傷も同じように、癒された。
次に近くで死んでいた味方兵が、何事もなかったかのように起き上がった。
まさかと思って敵兵の死体を見ると、こちらは微動だにせず転がっている。
…ルキナさんは歌い続けている。
祈るような体勢で、透き通るような賛美歌を。
俺はいつのまにか、彼女の歌に聴き惚れていた。
俺だけじゃなくシャオロンや大先生、ぴくとさんもそうだったのだろう。
時間にして、3分弱。
長いようで短い間、ルキナさんの歌は奇跡を起こし続けた。
その最後の余韻が消えた瞬間、戦場に響き渡ったのは拍手……
ではなく。
拡声器を通された、大音量の声。
掲げられる、日常国の軍旗。
よかった、間に合ったんだ。
振り返った俺の目に映ったのは、再び傾くルキナさんの身体。
一番近くにいたぴくとさんが、ルキナさんを受け止める。
その言葉に、俺は安堵を隠しきれなかった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!