目黒Side
やっぱり、あの違和感は嘘じゃなかった。お風呂で阿部ちゃんに問われたときはぐらかそうかとも思ったけど、最愛の人に隠し事はしたくなかったし阿部ちゃんには嘘吐きたくなかったから素直に伝えた。本人気付いてないけど上目遣い、プラス、ジト目で見られてたから余計に嘘は吐けない。
体温計で測ったらやっぱり熱があって……。家事も育児も阿部ちゃんに任せてしまうことが申し訳なかった。でも、早く復活するには寝るしかなくて睡眠欲に身を任せて眠ることにした。
翌朝、海斗の笑い声と阿部ちゃんが家事をしているであろう音で起きた。頭がぼんやりしていて体を起こそうと思ってもそれだけで疲れてしまいそうで、やめておいた。しばらくすると阿部ちゃんが入ってきて体調の確認をされる。
とにかく謝りたくて謝ったら、謝罪しなくて良いって言ってきて、こういうところが年上だと感じるんだよなぁ。
いつもとは違って阿部ちゃんが俺の頭を撫でてくれた。そのまま眠りについてしまえば阿部ちゃんが起こしに来るまでぐっすり寝ていた。
なんとか体を起こして、枕に凭れる。阿部ちゃんは心配そうに見つめてくるけど、動けることに安心したのかホッと息を吐いた。
阿部ちゃんに体温計を渡されて素直に脇に挟む。んー、昨日と変わってない気がするんだよなぁ。
これ、痛いんだよな。そう思うも、海斗たちに伝染したくないから文句は言わずに検査した。
しばらく待って、結果を見ると陰性。コロナじゃないとしてもインフルエンザの可能性はある。阿部ちゃんもその考えはしているみたいで、悩んでいる様子だった。
いつもとは立場が逆転してる。たまにはこういうのも良いかもな。ゆっくり動いて病院に行けるようにある程度身支度をする。阿部ちゃんが行けるようになれば、支えられながら家を出て車に乗り込んだ。
発熱外来に行って検査されるも、すべて陰性だった。阿部ちゃんはその結果にひどく安心したみたいでホッとしていた。
人のこと言えないけど、心配性な阿部ちゃんに肩を貸してもらいながら車から降りて帰宅。寝室へ行けばすぐに横になった。
阿部ちゃんに頭を撫でられれば、しっかり布団を上までかけて目を閉じた。扉の音が聞こえる前にどんどん意識が遠ざかっていく。
あぁ、俺、休めてなかったんだな。
今さらそう思っても、阿部ちゃんに迷惑かけてるのは事実でどうしようもないことだった。ちゃんと治ったら、阿部ちゃんに癒やしを提供してあげよう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!