main character / 及川徹
ending / メリーバッドエンド
Precautions / 嘔吐表現,依存
「怜奈ちゃんが事故で死んだ」
高校最後の夏。
クラスの人気者だった怜奈が事故で亡くなった。
私の心は、意外な程に冷静だった。
葬儀場の冷たい空気の中で感じたのは、
悲しみでも、怒りでもなく
背中に羽根が生えたような 開放感。
徹は、怜奈が眠っている柩に
縋り付いて泣いていた。
久し振りに見た、そんな弱い顔。
口角が緩みそうになるのを必死に抑えて、
徹の横に並んでしゃがむ。
背中を延々と擦る。
服越しに伝わる彼の身体は震えていた。
当たり前だ、つい先日まで共に過ごしていた人を
火葬するのは なかなかに気合いがいる。
焼くのを望んでいる人も、いるだろうけど。
ヒュっ、と息を吸う音が聞こえた。
怜奈が徹を裏切った、
確かに、そう表現しても相違ない。
あくまで、「気にすることじゃない」
という体を崩さない。
事実だけを、包んで伝えて
泥濘にハマったみたいに
私の存在に、囚わせる。
慈しみ____慈愛の心を、
前面に押し出す。
彼女は、徹とのデート中に
道路に飛び出してしまった らしい。
確かに 怜奈は
よく履きづらそうに ハイヒールを履いていた。
躓いて転ぶのは、よくあることだと思う。
怜奈の葬式から1週間経った。
徹は、人がいない寂しさを埋めるように
よく 私の家に来ては、ゲームをしたり
学校のことを吐き出したりしていた。
…ようやく、ようやくそこに辿り着いてくれた
浮気していたのは 周知の事実。
人気者ではあったが、信頼はしていなかった。
そう、あくまで
自ら告げ口をしては駄目だ。
徹に“きかれた”から、私は答えるだけ。
『彼氏が多いと、困っちゃう』 って。
あぁ、そんなに顔を歪めちゃって。
そんな君は どうしようもなく愛おしい。
泥濘の恋……End.












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。