駅のホームで、私は新しい制服に身を包まれ電車を待っていた。
今日は高校の入学式だった。
同じ中学から自分の高校に行くのは私ひとりで、新しい友だちが出来るか、その子達と仲良くやっていけるか、そんなことを考えていた。
ーふと、同じホームに立つ男子高校生が目に入る。
あれ、うちの制服だよね。
ここから通う人いるんだなあ。
なんかちょっと安心した。
遠くにいたから、はっきりと顔は見えなかったが、人当たりのいい、優しそうな雰囲気を醸し出していた。
もし同じクラスだったら、仲良くしたいな。
その時はまだその程度にしか思っていなかった。
張り出してあった教室に向かうと、本当に今日が入学式かと疑うくらいに騒がしかった。
私は指定された席に着いて、教室を見渡した。
そこには、どこかで見たことがある男の子がいた。
どこで見たかはわからなかった。
でも、どこかで見たことがあるような、そんな気がした。
私はなぜかその人のことをずっと考えていた。
入学式中もずっと。
入学式が終わり、また教室に戻ってきた。
でもまだ思い出せずにいた。
担任の先生優しそうな人でよかったな~。
なんて考えているうちに、ずっと気になっていた彼の順番になった。
ん…?
△△中学校…?
てことは最寄り駅の私と同じってことかあ…。
だとすると…
朝にホームで見たあの人かな…?
そう意識して見てみると、確かに朝感じたような優しそうな雰囲気を醸し出していた。
しかもすごいイケメンだなあ…。
出来れば仲良くなりたいなあ…。
でもイケメンすぎて話しかけに行くの緊張するなあ…。
なんて考えているうちに、自分の番になった。
HRが終わって、私たち新入生は帰る時間になった。
とりあえず友達が出来てほんとに良かったなあ~!!
じゃあもう帰ろ。
駅に向かうと、かんたくんがいた。
私はかんたくんと同じ車両に乗れる位置に立ち、電車を待っていた。
すると、イヤホンを付けスマホの画面を見ていたかんたくんと目が合った。
私は恥ずかしくて、すぐに目を逸らした。
もう1度かんたくんの方を見てみると、きょとんとした顔をしていて、わたしがもう1度見ていることに気づいた途端、にこっと優しそうにほほえんだ。
やばい。すっごくかっこいい。
私は今すぐにでもかんたくんの虜になりそうだった。
電車が来ると、かんたくんはわたしに近づいてきた。
どうしよう、私今かんたくんと話してる…?
自分の鼓動が速くなっているのを感じた。
私は意識してしまってうまく話せなかった。
ましてや私たちは初対面だ。
気まずい沈黙が続く。
そんな他愛もない話をしているうちに駅に着いた。
はあ。
色んなことありすぎて収集つかないなあ…。
でも、明日から素敵な高校生活送れそう!!
こうして私の高校生活が始まった。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。