雨明さんの回想中……
あれから私達は、雨明さんの昔話を聞いていた。
しかし、幼少期からずっとセーラーに対する執着が変わらないとは……
ある意味 純愛、差し詰め変態だな。
最近流行りのDIYってやつですね。
封印グッズ自作系男子、私はいいと思いますよ。
私がそう言うと、
俺が作ってないし変なカテゴリ作んなや
と雨明さんに怒られ、命にも、
変に煽んな
と呆れながら言われた。
煽った記憶なんてないんだけどな。
それにしても、先生も中々面倒な星の元に生まれたものだ。
とことん巻き込まれ体質というか、
生まれた瞬間から人生ハードモード設定というか。
それはそれで嫌だけども
雨明さんの一言に私達は少し黙る。
というか死神、お前はずっと魂だの成仏だの非科学的なこと言っとったやろ。と後で雨明さんに言われたが、それとこれとは別である。
確かに。
晴明先生の危うさも、退魔の力のことも、兄として心配なのはよく分かる。
でも…本人の意思も聞かずに真っ向から反対するのは、いくらブラコンだとしてもやり過ぎじゃないか?
という言葉が喉まで出かかった、その時。
この張り詰めた空気を破ったのは、隣に立っていた命だった。
命の発言に雨明さんは思わず顔を上げる。
その瞬間、背後から間延びした声が聞こえたが、命はそれを遮るように言葉を続けた。
命は真っ直ぐ雨明さんを見据える。
その空気を裂くように、雨明さんの低い声が落ちた。
次に命は雨明さんの方に向き直る。
命の言葉に雨明さんがパッと目を見開く。
命は視線を逸らし、肩をすくめる。
言われ様がスゴい
命がそう言った瞬間、ボトッと何かが落ちた音と共に鼻をすする情けない音が聞こえた。
そして、その音の方を全員が振り向くと───
そこには、目を潤ませた晴明先生が両手で顔を覆い震えていた。
どうやら、全部聞いていたらしい。
先生が一直線に命へ飛び込み、命の体が後ろへ押し出される。
ドボ───ッン!!!
水柱を上げながら提灯の光を反射して水滴がきらきら散り金魚が一斉に逃げ惑う。
ビニールがぐにゃりと沈み、二人は
そのまま金魚すくい用のビニールプールへ落ちていった。
先生は命の上に覆いかぶさりそう言った。
一見すれば、ちょっとした感動シーンに見えるかもしれない。
まぁ、倒れたところが水の溜まったビニールプールじゃなければの話だけど。
先生の顔からすっと血の気が引く。
ようやく自分のやらかしに気づいたみたいだけど、時すでに遅し。
命は無言で先生の襟首を掴み、横のケバブ屋台へと移動する。
逆さに吊り上げられながら、そう懇願する先生の横でケバブ屋のおじさんが、なぜかノリノリで包丁を研ぎはじめる。
命はと言うと、そんな様子を冷めた目で見つめていた。
あ、それ言っちゃう?
先生がそう言うと、命の目がすっと細くなる。
そしてケバブ屋のおじさんにひそひそとなにか耳打ちをする。
さっきまでの緊張感はどこへやら。
本当に、あの2人は。
私は椅子に腰を下ろし、遠巻きにその様子を眺める。
無愛想な声に私が振り向くと、雨明さんが腕を組んだままこちらを見ていたのだった。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。