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第7話

無口な幼なじみの
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2025/07/15 08:21 更新





夏の終わり、蝉の声が遠のく午後。


体育館の隅、ボールの跳ねる音が響く中、私は幼なじみの流川楓を見ていた。



彼は何も言わず、ただひたすらにゴールを狙いシュートを打ち続けている。



『……まぁた居残り練習?』



声をかけても、返事はない。



でも、それが流川くんの“いつも”だった。



『お水、持ってきたよ。』



そう言って差し出すとようやく彼の手が止まり、ペットボトルを受け取ってくれる。



視線は合わせないくせに、ちゃんと礼だけはするようにボトルを軽く上げる。



「……さんきゅ。」



その一言が、こんなにも嬉しいなんて。



無愛想で無口で、でもバスケには誰よりも真っ直ぐな彼。



言葉は少ないけど、背中で伝えてくるものがある。



『ねぇ、練習終わったあと……少しだけ、話せる?』


「ん、あぁ。」



短く答えて、また彼はボールを持った。



でもその一瞬、ちらりとこっちを見た彼の目は、確かに少しだけ優しかった。













放課後の体育館。



窓から差し込む夕日が流川くんの影を長く伸ばしていた。



私はベンチに座り、彼の練習をぼんやりと見つめていた。



たまに鳴るシュート音とバウンドのリズムが心地よくて、何も考えずにいられるこの時間が好きだった。



気づけば、もう誰もいない。



体育館には、私と流川くんのふたりだけ。



『……あとどれくらいやるの?』


「あと20。」



その言葉通り、彼は黙ってシュートを打ち続けた。



集中している時の彼は、まるで別の世界にいるみたいに静かで、でも熱くて。



20本目を決めたとき、ようやく彼はボールを脇に抱えてこっちに向かって歩いてくる。



「話、あるんだろ。」


『……うん。』



でもいざ話そうと思うと言葉が喉の奥に詰まってしまう。



伝えたいことはいっぱいあるのに、なんでだろう、顔を見たら全部飛んでいってしまう。



「なんだよ。」



流川くんが少し眉をひそめる。



怖い顔、でも私は知ってる。



それが“心配してる時”の彼の顔だってこと。



『……最近、頑張りすぎじゃない?』


「は?」


『無理してないかって聞いてるの。だって朝練も昼も、夜も、ずっとバスケじゃん。バスケが好きなのは分かるけど、オーバーワークで倒れちゃうよ。』



沈黙が流れる。



彼は答えない。



けど、その目だけはじっと私を見ていた。



「……おまえに関係ねーだろ。」



少し棘のある言い方。


怒らせちゃったかな?



そう思ったけれど、私は笑ってしまった。



『そうだね、関係ないかも。でも……私は、流川くんが倒れたりするの、イヤだから』



流川くんは、ほんの一瞬だけ目を伏せた。



まるで、何かを堪えるように。



「……だったら。」



彼が少しだけ顔を上げた。



その目は思ってたよりもずっとまっすぐで、やわらかくて。



「もっとそばにいろ。そうしたら、たぶん……バランスとれるかもしれねぇ。」



心臓が、跳ねた。



『えっ…と……?。』


「おまえといると、なんか落ち着くから。」



たったそれだけの言葉が、胸の奥までしみ込んでくる。



無口で不器用な彼の、彼なりの優しい言葉。



『……うん、いるよ。いつでも。』



私がそう言うと、彼はふいに顔をそらして、ボールを拾いに行くふりをした。



顔は見えなかった。見せてくれなかった。



でも私にはわかった。



その耳が、少しだけ赤くなってたこと。







『ていうか、バランスって何なのよ。』


「バランスはバランスだどあほぅ。」


『変なのー。』












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