第64話

今の声
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2026/05/13 15:00 更新


収録終わりの楽屋。

ジェシー「腹減った〜!」

樹「うるさ」

髙地「今日長かったねぇ」

いつも通り騒がしい空間。

その中で。

慎太郎「……つかれた」

ぽつ、と零れた声に。

5人が同時に振り向いた。

慎太郎「……え」

大我「今」

北斗「声」

樹「低くなかった?」

慎太郎「は?」

慎太郎自身は分かっていない顔。

でも確かに。

少し前より、
声が低くなっていた。

ジェシー「え、待ってもう一回喋って!」

慎太郎「やだよ!!」

髙地「あはは、意識すると恥ずかしいやつ?」

慎太郎「違うし!」

……あ。

今。

最後ちょっと高かった。

数秒後。

樹、大爆笑。

樹「待って、“違うし!”だけめっちゃ幼かった」

慎太郎「〜〜っ!!」

ジェシー「不安定だ〜!」

大我「可愛いねぇ」

慎太郎「可愛い言うな!!」

耳真っ赤。

最近。

慎太郎の声は少しずつ変わり始めていた。

低くなる日もあれば、
急に高い声に戻る日もある。

本人はそれがかなり気になるらしく。

慎太郎「……変じゃねぇ?」

小さく呟く。

その瞬間。

楽屋が静かになった。

北斗「別に」

慎太郎「……でもさ」

樹「成長してるだけだろ」

ジェシー「大人の階段〜♪」

慎太郎「茶化すなって」

でも。

不安そうだった。

中3。

子どもでも大人でもない時期。

変わっていく自分に、
少し戸惑ってる年頃。

大我「慎太郎」

慎太郎「ん」

大我「今しか聞けない声ってことじゃない?」

慎太郎「……は?」

髙地「たしかに」

樹「レア期間じゃん」

慎太郎「なんだそれ」

北斗はソファに座る慎太郎を見ながら、
ふっと笑った。

北斗「まぁでも」

慎太郎「?」

北斗「ちゃんと大人になってってる感じする」

慎太郎「……!」

ぱっと目が開く。

慎太郎は、
北斗のそういう言葉に弱い。

樹「うわ、顔分かりやす」

ジェシー「嬉しいんだ〜♡」

慎太郎「違ぇし!!」

……あ。

また高くなった。

全員吹き出す。

慎太郎「笑うなぁ!!」

ソファのクッションを投げる慎太郎。

でも。

5人は楽しそうに笑うだけ。

髙地「でもほんと、成長したよねぇ」

大我「前までこんな小さかったのに」

慎太郎「小さい言うな!」

ジェシー「ほらまた高い!」

慎太郎「うわぁぁぁ!!」

ついに慎太郎が顔を隠してしゃがみ込む。

北斗「ははっ」

慎太郎「北斗まで笑うなよぉ……」

その声は少し拗ねていて。

でもどこか甘えていた。

北斗「大丈夫だって」

慎太郎「……なにが」

北斗「どんな声でもお前は慎太郎だろ」

慎太郎「……っ」

一瞬止まる。

それから。

慎太郎「……ずる」

北斗「何が」

慎太郎「そういうこと言うの」

樹「お、照れてる照れてる」

慎太郎「うるさいっ!!」

真っ赤になって騒ぐ慎太郎を見ながら、
5人は思う。

きっと数年後には、
この声も大人になっていく。

でも。

今だけの、
不安定で幼いこの時期も。

たぶん、
一生忘れられない。
fin.

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