西日射す古臭い教室の中、彼は黒板の前に立っていた。
懐かしい、ボロボロになってしまった子供の頃の宝物でも扱うかのような優しい手つきでそっと黒板に触れ息を吐く。
少し震えている指先を隠すかのように両手で包み隠し額を寄せる。
深呼吸を一つ置き、教卓に振り返った。
そして一つ一つの机をゆっくり見渡し明日からその席の持ち主となる生徒の名前を呼んでいく。既に全員の苗字と名前を覚えたのかフルネームを出席簿を確認せずにスラスラと言い当てていた。
スゥ、と短く息を吸うとともに彼は記憶の中にあるあの人の言葉を頭の中で反芻させ、音として空気を震わせた。
外には沈みかけていた太陽の代わりに満月が一番星や他の星々をかき消すように爛々と光り輝いていた。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。