だから言ったのだ
白い世界で俺はやつの声を聞く
姿は見えない
真っ白な世界に俺は1人佇む
なぜ邑佐陽飛を助けた
そのせいで、お前は死ぬことになるんだぞ
自分を、犠牲にしてまで人を救う理由がわからない
やはり、意味がわからない
ここで俺はずっと感じていた疑問をぶつける
ここは生と死の狭間、いわゆる境界線だ
そうだなぁ、こういっておこう
零世界
声主は少し考え
答えた
わかった、これが最後のチャンスだ
声主はそういうと、パチンという音を立てる
俺は、意識を失った
5月26日金曜日
目を覚ますと知らない天井
体の感覚もある
……………戻ってきた
俺は辺りを見渡す
ベッドの横には布団に顔を埋めた陽飛さんと俺の母さん
俺は起き上がろうとする
痛い
全身が痛い
ドアの方を見ると医者はこっちに向かって歩いてきていた
声が出ない
声を出すだけで体が痛い
陽飛さんは顔を埋めたまま動かない
俺は頭の方に手を伸ばす
俺は少し躊躇いながら頭に触れる
そして、頭を撫でる
陽飛さんは小刻みに震えている
泣いているのか
俺は痛いのをこらえて
痛い
やっぱり痛い
でも
陽飛さんはその言葉を聞いてぴくりと動き
声を上げて泣いた
5ヶ月
無駄にした
目覚めてから5ヶ月
10月28日の昼頃
ベッド付近の私物を全て回収し撤収する
5ヶ月もかかるなんて思ってなかった
陽飛さんが失踪するまで残り3ヶ月半
失踪当日は陽飛さんとずっと一緒にいた方がいい
陽飛さんを尾行している奴もいるかもしれない
陽飛さんが危ない時は俺が止めなくては
continue to next time
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。