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第6話

【高校篇】秘密の杏色〜夕食〜
13
2019/08/28 16:09
午後六時を少し過ぎたぐらい。

あや子
ねぇ、りお。眞琴ちゃんの家族に晩ご飯、ご馳走しようと思ってるの。呼んできてちょうだい。
りお
なんで俺が。
引っ越してきて、挨拶回りに他の部屋は行った。

でも、肝心な眞琴の部屋には行かなかった。

それが狙いか…

さっき気づいた事だけど、あいつの部屋はうちの隣だった。

まずは両隣に挨拶するのは当たり前。

おかしいと思ったんだ。
かな子
おい、りお!速く行ってこいよ。
りお
はいはい。分かりましたよ。
姉ちゃんは怒らせると冗談抜きで恐い。

言われた事は大人しく聞いていた方がまし。

男の俺でも、未だに勝てない。

そのぐらい力も喧嘩も強い。
姉ちゃんに言われるがままにするのは、気が進まなかった。

けど、何となくさっきの帰り道は話し足りなかった。

久しぶりに思い出話がしたい。

俺は隣の部屋のドアを叩いた。

ドアが音を立てて、ゆっくりと開いた。
眞琴
どうしたの?
りお
母さんと姉ちゃんが、たくさん飯作ったから一緒に食おうって…
おじさんとおばさんも呼んでさ。
眞琴は少し、迷った表情になった。

晩飯食い始めちまったか?
眞琴
お父さんもお母さんも出張でいなくて…
私だけなんだけど…良いかな?
りお
何だ…そんな事か。
母さんたちは全然気にしないだろ。
眞琴
良かったあ
じゃあ、ちょっと準備してくるね。
眞琴はそう言って、部屋に戻って行った。

けれども、十秒も経たないうちに、また部屋から出てきた。
眞琴
戸締りしないとね。
りお
そうだな。
俺の部屋に一緒に入っていくと、母さんと姉ちゃんが眞琴を抱きしめた。

まるで生き別れの家族と再開したかのようだ。

大袈裟な。
尚人
ただいま。
おや、眞琴ちゃん、いらっしゃい。
四人で飯を食い始めていた所に、親父が帰ってきた。

眞琴がいても、少しも驚くことなく、優しい笑顔を浮かべて歓迎した。
俺たち家族は、アメリカでのおもしろかった事とか、苦労した事とか、とにかくたくさんの話を眞琴に話した。

眞琴も、俺たちが引っ越した後の話をたくさん話してくれた。

小学校の時の、学年一やんちゃだった奴が中学では真面目に委員長やってた話。

小学校の校舎が綺麗になって、棟が一つ増えた話。

結城が、中学の文化祭のクラス発表の劇で、男役をやった話。

どれだけくだらなくて、長い話でも、聞き飽きることはなかった。
あや子
飲み物切らしてる!
りお、悪いけど買ってきてくれない?
楽しく思い出話をしている最中に、母さんが俺に頼み事をしてきた。

ふざけんなよ。

飲み物ぐらい買い足しとけよ。
かな子
あ、ついでにチューハイも買ってきてくれない?
尚人
父さんのビールも頼まれてくれないかい。
おい、いい加減増やすなよ。

うちはいつもそうだ。

誰かが一つ頼まれごとをすると、ついでついでって言って頼まれごとを増やす。

俺はいつもこれの被害者。

今回もだ…。

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