第4話

“好き” の意味
124
2020/12/10 15:05
ヴェール
わた…くし…?
ファージャ
……ごめん、、、
もう遅いし、部屋戻るわ!おやすみ!
耐えきれなくなり、逃げるようにヴェールの部屋を後にする。
ファージャ
(いやいやいや、下手くそか!!
あーーーもうっ!うちのアホ!)
自分の部屋に戻り、ヴェールのようにぺたりと座り込む。
ファージャ
ほんまどんだけ泣くねん、うち…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日の夜。
コンコン、とノックの音がした。
ファージャ
(まさか…)
ドアを開けると、真面目な顔をしたヴェールが立っていた。
ファージャ
あ、ヴェールはん…昨日はごめ…
ヴェール
お話がありますの。
ファージャ
え?
昨日の今日でとても気まずいが、断る理由もない。
ヴェールを部屋に入れ、ベッドに横並びに座る。
ヴェール
今日一日、ずっと考えていて…わたくし、ファージャさんのことはもちろん好きですけれど。どういう意味での“好き”なのか分からなくて。
ファージャ
あー、うん…。
ヴェール
人間の意見が聞きたくて、スキャターさんに相談に行きましたの。そうしましたら、
スキャター
((友達としての“好き”か、恋人としての“好き”か分からないときは、あの…そういう…行為をしたくなるかどうかで決まるんじゃないですかね?))
ヴェール
…って言われましたの。
ファージャ
え!?
そう言われてみれば、そうなのかもしれないが…

でもあまりに唐突すぎる。
ヴェール
だから、その、、試しに…と言っては失礼ですけれど…ファージャさんになら、わたくし…
ベッドについていた手を握られる。
ファージャ
いや、でも…
ヴェール
一度、試して頂きたくて…。
もし体が拒否反応を起こした場合は、
友達としての“好き”ということになると思いますの。
ファージャ
起こさんかったら…?
ヴェール
その時は…どうなるかは分かりませんわ、初めてのことですし…。ファージャさんにおまかせします…。
急展開すぎる。

でも、ヴェールなりに一日中考えてくれていたのだろう。
スキャターの言葉に妙に納得してしまった自分も居るし、
できればそういう行為をする仲になりたいと願っている自分も密かに居るのだ。
しばらく考えた後、口を開く。
ファージャ
でも、うちも…何からやればえぇんか分からんのやけど…。
ヴェール
ファージャさんが
したいことをしてくだされば…。
そう言って恥ずかしそうに俯く。
ファージャ
えっと、、キス…とか?
ヴェール
……。
ヴェールは恥ずかしくなったのか、俯いたままだ。 

ファージャ
…そうそう、この前ヴェールはんが怖い夢見たってゆーてきて、一緒に寝たときあったやんか?あの時うち、長いこと寝られへんかったんやで!
ヴェール
え!そうだったんですの?
ファージャ
ほんで、ヴェールはんの寝顔見ててん。めっちゃ可愛いなぁって思てたんやで!
ヴェール
…そんなこと、聞いてないですわ。
もう!と恥ずかしそうにするヴェール。
ファージャ
そんでな、唇見てたら
目が離せへんくなってん。
……今もなんやけどさぁ…
ヴェール
え…?
ヴェールのほうへ距離を詰めて座り直す。
ファージャ
…もっと見せてくれへん?
ヴェール
えぇ…。
緊張した目でずっと見つめてくる。

それがとても愛おしい。
ファージャ
触ってもえぇ?
ヴェール
……。
静かに頷いた。


人差し指でヴェールの唇にそっと触れる。
ファージャ
めっちゃ可愛い…ふわふわやぁ…。
少しだけ目を泳がせたが、唇を触られているからか
何も言わずにじっとしてくれている。


ファージャ
なぁ…目瞑ってくれへん?
うちもちょっと恥ずかしいねん…
素直に目を瞑るヴェール。 そしてー。



祈るような気持ちで、初めてのキスをした。



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