耐えきれなくなり、逃げるようにヴェールの部屋を後にする。
自分の部屋に戻り、ヴェールのようにぺたりと座り込む。
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次の日の夜。
コンコン、とノックの音がした。
ドアを開けると、真面目な顔をしたヴェールが立っていた。
昨日の今日でとても気まずいが、断る理由もない。
ヴェールを部屋に入れ、ベッドに横並びに座る。
そう言われてみれば、そうなのかもしれないが…
でもあまりに唐突すぎる。
ベッドについていた手を握られる。
急展開すぎる。
でも、ヴェールなりに一日中考えてくれていたのだろう。
スキャターの言葉に妙に納得してしまった自分も居るし、
できればそういう行為をする仲になりたいと願っている自分も密かに居るのだ。
しばらく考えた後、口を開く。
そう言って恥ずかしそうに俯く。
ヴェールは恥ずかしくなったのか、俯いたままだ。
もう!と恥ずかしそうにするヴェール。
ヴェールのほうへ距離を詰めて座り直す。
緊張した目でずっと見つめてくる。
それがとても愛おしい。
静かに頷いた。
人差し指でヴェールの唇にそっと触れる。
少しだけ目を泳がせたが、唇を触られているからか
何も言わずにじっとしてくれている。
素直に目を瞑るヴェール。 そしてー。
祈るような気持ちで、初めてのキスをした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。