夜、四郎は一郎の部屋に行こうとしていた。

二郎が、発した言葉を聞いて、三郎がばしっと頭を叩いた。

三郎は、少し声を小さくして言った。

四郎に聞こえないようにしたいのだろう。

二人が話している間、四郎は一郎に呼ばれて、既に部屋に入っていた。

そう言って、各自自分の部屋に入っていった。

一郎のベッドは、一人用だけど少し大きくて、四郎ぐらいなら余裕で入る幅がある。

四郎は、ベッドに自分の枕を置いて、布団に入った。

電気が消え、辺りは真っ暗となる。

山田家はみんな、少しの明かりでも眠れないから、いつも真っ暗にして寝るのだ。

一郎が布団に入ってきて、体の熱が伝わってくる。

四郎も一郎も上を向いて寝ている。

一郎が、ちらっと四郎の方を見ると、天井の一点をじっと見ていた。

どんな表情をしているかは、わからない。

声のトーンは、至って普通だった。

涙声でもない。

少し吹っ切れたような声だ。

一郎の問いに、四郎は少し間を開けた。

今の四郎はどっちだろう、と一郎は少し考えた。

笑顔があるわけじゃない。

でも、いつも笑顔の人だって、友達と喧嘩をすれば笑顔など消えるだろう。

四郎は、まだ天井を見つめていた。

そこで、やっと四郎は一郎の方を向いた。

目を潤ませてはいないものの、少し泣きそうな顔をしているのが予想出来た。

確かに、四郎は笑顔が多い時と少ない時で、極端に分かれることがある。

でも、人間はみんな性格が一定なわけじゃない。

一郎の力強い言葉に、四郎は少しの間黙っていた。

小さく、でもはっきりと言った。

一郎がふっと笑うと、四郎の頭を撫でた。

いつもの優しい笑顔だ。

四郎の微笑んだ顔を見て、一郎は眠りについた。



四郎は少しの間、眠らずに起きていた。

朝、一郎は、四郎の好きなものを作るため、少し早く起きた。

一郎がご飯を作っていると、いつもより早めに二郎と三郎が起きてくる。

三郎が、一郎の部屋で寝ている四郎を起こしに、階段を上がった。

三郎は、少し違和感を感じた。

三郎の頭に、咄嗟に浮かんだ言葉がある。



無愛想。



違和感の正体は、まさにこれだった。