薄暮の教室に1人。
空気中に薄ら埃が舞っており橙色の陽の光に照らされてまるで宝石のように見えた。
同じクラスの垣永さんはある程度仲が良く、休み時間になると話も沢山している。
……だけど友達なのか疑う時が多々ある。
例えば今みたいに掃除当番を毎回肩代わりしてきたり、宿題を毎回のように写したり、班の調べ学習を殆どやらせたりと私に仕事を殆ど任せてくることが多く、中々自分でやらない。
だけど頼む時決まって
「夢子にしか頼めない」
と言う。
そう言われると断りにくくなってしまう。
水が入ったバケツとモップを用意して机を1人で動かして水で濡らしたモップで一生懸命床を拭いた。
そして掃除が終わって片付けて帰路に着いた。
家に着いてドアを開ける。
香水の匂いがプンプンする。
いい匂いを超えてもはや吐き気を催す。
私の家はお父さんを早くに亡くして、母は水商売をしている。お母さんはもう私には興味が無い。
こんなにも在り来りな不幸な家族は小説や漫画だけだと思ってた。けど私がこうなるとは思わなかったよ。
お母さんはまだメイクの途中。
でもその段階でも素顔とは一段と違う。
厚く塗られた真っ赤のリップ。
白く塗られたファンデーション。
キラキラとラメが執拗いぐらいに付いてるアイシャドウ。
もとよりすごく長い睫毛。
元から整ってたお母さんの顔がさらに綺麗になってく。
メイクを完成させたお母さんはキツイ匂いのするバラの匂いの香水を付けて仕事へ向かった。
私もお母さんが出かけて30分程したらコンビニにご飯を買いに行った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!