* side スタンリー
あの日、あなたと初めて会った日。
俺はただの任務で、そこにいた。
元 特殊部隊幹部。
現在は裏社会の
ブローカーとして動いている人物。
その男が
このエリアに頻繁に出没している
という報告が上がっていた。
今回の目的は、あくまで情報収集。
実働は、別のやつらが担当する予定だった。
周囲の人間の動きに異常はない。
すべて、予測の範囲内。
……その、はずだった。
不意に聞こえた音に視線を向けると
そこには、一人の少女がいた。
──── それが、あなただった。
細い指が、弦をなぞる。
喧騒の中でも目を引く歌声。
理解できない感覚だった。
その女は危険でも
脅威でもない。
それなのに何故か
俺はそいつから視線を外せなかった。
歌が終わると、
女の視線が真っ直ぐに俺を見る。
おそらくその瞬間、
任務の優先順位がわずかに狂った。
⟡.·
その翌々日。
あろう事か、
例のブローカーが
その女に話しかけていた。
あくまで任務内容は情報収集。
接触は避けるべき事案。
つまりは、放置が最適解だった。
だが、
気づけば
男と女の間に割り込んでいた。
本来、ありえない判断だった。
そしてさらに
ありえないことが起きる。
俺の返答も待たずに
あなたは俺の手を取って走り出す。
その目には、意外にも
恐怖や焦りは微塵もなかった。
拙い英語で話しながら
俺の手を掴んだまま、そいつは笑う。
心の底から、楽しそうに。
見た目に反してイカれたやつか。
はたまた肝が座りまくってるか。
そんなのは
別に、どちらでもよかった。
たしかなことは
俺の中に生まれたイレギュラーは
この、名前も知らない
日本の歌姫がもたらしたってことだ。
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すぐ側で倒れている女を
ただじっと見下ろした。
まさか、3700年も先の未来で
こんな形で再会するとはな。
もう、やりきる以外ねぇ。
ゼノを奪還する。
それが俺に課された仕事だ。
⟡.·
少年科学団の本陣を
ほぼ壊滅まで追い込んだところで
すぐ近くまで迫り来る石化の光。
目の前にそびえ立つのは
復活液が置かれたタワー。
千空たちは
石化後に仲間の一人が
あの復活液シャワー浴びて、勝利すん気だ。
撃たなきゃ、確実な負け。
撃ちゃ、人類滅亡と引き換えに
ワンチャン勝てる。
そして銃を構え
引き金に指をかけた、その瞬間。
衝撃。
手元から銃が弾かれる。
地面に落ちた銃に
視線を向けると、
銃を貫くように突き刺さった
一本の矢。
矢の放たれた方に顔を向ければ、
血に濡れて
今にも崩れ落ちそうな身体で
弓を構え続けている、あなたがいた。








![た と え 君 が ま た 消 え て も [Dr.stone]](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/cf7c52a786e0103a466919ffa8ff9b8bd228b1b7/cover/01JJX9DWBW8YCGJ0DXFE2YAYB3_resized_240x340.jpg)




編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!