第12話

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2025/12/31 14:28 更新
――スンミン視点――

泣いている彼女を見るのは、正直つらかった。

肩を小さく震わせて、必死に声を抑えて。
怖かったことを言葉にするたび、胸が締めつけられる。

――間に合ってよかった。

それが、最初に浮かんだ感情だった。

でも同時に、遅かったかもしれないとも思った。
あそこまで追い詰められるまで、
俺は「様子を見る」なんて曖昧な距離にいた。

それが、腹立たしかった。

校舎裏で、彼女が泣き止むまで待つ間、
俺の中で一つずつ、感情が整理されていく。

怖い思いをしたこと。
声が出なかったこと。
助けを求めたこと。

全部、彼女の弱さじゃない。
それを利用しようとしたやつが、間違ってる。

家までの帰り道、彼女は少し疲れた顔をしていたけど、
さっきより呼吸は落ち着いていた。
スンミン
スンミン
今日は、ゆっくり休んで
そう言うと、彼女は小さく頷く。

アパートの前で立ち止まったとき、
一瞬、迷った。

ここで踏み込みすぎたら、
彼女にとって“重い存在”になるかもしれない。

でも。
スンミン
スンミン
明日も、俺が迎えに行く
(なまえ)
あなた
え……?
スンミン
スンミン
一人で登下校しなくていい
断定だった。
選択肢を与える言い方じゃない。

でも、彼女は少し驚いたあと、
ゆっくり頷いた。
(なまえ)
あなた
うん
(なまえ)
あなた
ありがとう
その返事を聞いて、胸の奥が静かに落ち着いた。

部屋に戻って、ドアを閉める。

一人になると、ようやく感情が表に出てくる。

――ジフン。

あいつの顔が浮かんだ瞬間、
喉の奥が、冷たくなる。

表ではいい顔をして、
相手の不安に入り込む。

ああいうやつは、
「断られない相手」を選ぶ。

彼女は、選ばれてしまった。

もう、見過ごさない。

俺は、誰かを独占したいタイプじゃない。
束縛も、好きじゃない。

でも。

守るべき一線を越えてきたなら、話は別だ。

彼女が怖い思いをした事実は、消えない。
だからこそ、繰り返させない。

――俺が前に立つ。

それだけだ。

ベッドに腰を下ろして、天井を見上げる。

気づいてしまった。

これはもう、
「隣の席だから」とか
「隣人だから」とか、
そんな理由じゃない。

俺は、彼女を大切にしたい。

その気持ちに、
名前をつけるのは、まだ早いかもしれない。

でも一つだけ、はっきりしている。

もう、離さない。
怖い思いは、させない。

それが、
今日の夜に俺が決めたことだった。

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