第11話

EP.11
124
2025/06/30 16:50 更新



夕暮れの空はすっかり赤く染まり、静かな住宅街の中を、火神先輩と二人で歩いて帰っていた

……あぁ、なんか今日もすごく幸せだったな
心の中でそう思っていると、

ピコンッ

スマホからLINEの通知音が響いた
画面を見ると──そこには“高尾和成”の名前


「やっほ〜〇〇ちゃん!次の休みヒマ〜?どっか遊び行かない?」
と軽いノリの文面と一緒に、ウィンクしてるスタンプが添えられていた


え、なにこれ……
思わずスマホを見つめて固まる私
それに気づいた火神先輩が、隣から覗き込んでくる


火神 大我
どうしたのか?
あなた
あ、えっと……



隠そうと思ったけど、なんかもう誤魔化しきれなくて、
そっと火神先輩に画面を見せる


火神 大我
……高尾?



火神先輩の声が一段階低くなる
そしてスマホの画面をじっと見たあと


火神 大我
ったく、高尾のやつ



と、ぼそっと呟く
その言い方が、なんというかめちゃくちゃ不機嫌そうで


火神 大我
返すんだろ、……行くの?
あなた
んー……いや、行かないですね
火神 大我
ふーん…



火神先輩はそれ以上何も言わず、前を向いてスタスタと歩き出した

本人は多分気づいてないけど、明らかにテンションが下がっている

でも、すぐに火神先輩が立ち止まり、振り返って言った


火神 大我
なんかあったら言えよ?



ふいに真っ直ぐな目でそんなことを言われて、
胸がぎゅっと締めつけられる


あなた
……はい



私は、顔が熱くなっていくのを感じながら、ただ頷いた

火神先輩はちょっと照れたように鼻をかきながら、


火神 大我
じゃ、また明日な



といつもより少しだけ優しい声で言って、
夕焼けの中、マンションの前へと歩いていった





帰宅後
部屋に入ると同時に、どっと疲れが押し寄せた

はぁ……高尾先輩、どうやって断ろう……
スマホの画面には、まだ未読スルーのままのLINE

火神先輩が嫌がってたし……でも断ったら、なんか角が立つかな……でも行きたくないし……

ぐるぐるぐるぐる、答えの出ない悩みが脳内を支配する
気がつけば、壁掛け時計の針は23時を過ぎていた


と、そのとき

ピピピピピ…♪

静かな部屋に突然響いた着信音に、思わずビクッと肩が跳ねる
画面には

『火神先輩』 の文字

え……火神先輩……!?こんな時間に……
心臓がバクバクして、指が震える
恐る恐る通話ボタンを押すと、すぐに火神先輩の声が耳に届いた


火神 大我
『……よぉ、今大丈夫か?』



いつもより少し優しめで、少し低くて、
その声だけで胸の奥がギュッとなる


あなた
は、はい!大丈夫です!



緊張で裏返りそうな声を必死で抑えると、
電話の向こうで少し間があって


火神 大我
『……部屋の電気ついてっからさ、まだ寝てねーのかと思って。』
火神 大我
『悪い。迷惑だったか?』



私は思わずカーテンを開けて、小窓の向こうを覗く
すると暗い部屋の中でスマホを耳に当てた火神先輩が
こちらを見上げていた

……やっぱり……見てたんだ……
胸がきゅうっと苦しくなる
恥ずかしくて、でも、すごくすごく嬉しくて


あなた
い、いえ!そんなことないです……電話、嬉しいです……



小さく答えると、
火神先輩は窓の向こうで少しだけ目を丸くして、
でもすぐに照れたように視線を逸らした


火神 大我
そっか。じゃあもう遅いし、早く寝ろよ
あなた
……はい、おやすみなさい



通話が切れても、心臓のドキドキは全然止まらなかった

……火神先輩、ずるいよ……

小窓越しに見えた火神先輩の顔が頭から離れなくて、
私はしばらく布団の中でゴロゴロと転がり続けた


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