夕暮れの空はすっかり赤く染まり、静かな住宅街の中を、火神先輩と二人で歩いて帰っていた
……あぁ、なんか今日もすごく幸せだったな
心の中でそう思っていると、
ピコンッ
スマホからLINEの通知音が響いた
画面を見ると──そこには“高尾和成”の名前
「やっほ〜〇〇ちゃん!次の休みヒマ〜?どっか遊び行かない?」
と軽いノリの文面と一緒に、ウィンクしてるスタンプが添えられていた
え、なにこれ……
思わずスマホを見つめて固まる私
それに気づいた火神先輩が、隣から覗き込んでくる
隠そうと思ったけど、なんかもう誤魔化しきれなくて、
そっと火神先輩に画面を見せる
火神先輩の声が一段階低くなる
そしてスマホの画面をじっと見たあと
と、ぼそっと呟く
その言い方が、なんというかめちゃくちゃ不機嫌そうで
火神先輩はそれ以上何も言わず、前を向いてスタスタと歩き出した
本人は多分気づいてないけど、明らかにテンションが下がっている
でも、すぐに火神先輩が立ち止まり、振り返って言った
ふいに真っ直ぐな目でそんなことを言われて、
胸がぎゅっと締めつけられる
私は、顔が熱くなっていくのを感じながら、ただ頷いた
火神先輩はちょっと照れたように鼻をかきながら、
といつもより少しだけ優しい声で言って、
夕焼けの中、マンションの前へと歩いていった
帰宅後
部屋に入ると同時に、どっと疲れが押し寄せた
はぁ……高尾先輩、どうやって断ろう……
スマホの画面には、まだ未読スルーのままのLINE
火神先輩が嫌がってたし……でも断ったら、なんか角が立つかな……でも行きたくないし……
ぐるぐるぐるぐる、答えの出ない悩みが脳内を支配する
気がつけば、壁掛け時計の針は23時を過ぎていた
と、そのとき
ピピピピピ…♪
静かな部屋に突然響いた着信音に、思わずビクッと肩が跳ねる
画面には
『火神先輩』 の文字
え……火神先輩……!?こんな時間に……
心臓がバクバクして、指が震える
恐る恐る通話ボタンを押すと、すぐに火神先輩の声が耳に届いた
いつもより少し優しめで、少し低くて、
その声だけで胸の奥がギュッとなる
緊張で裏返りそうな声を必死で抑えると、
電話の向こうで少し間があって
私は思わずカーテンを開けて、小窓の向こうを覗く
すると暗い部屋の中でスマホを耳に当てた火神先輩が
こちらを見上げていた
……やっぱり……見てたんだ……
胸がきゅうっと苦しくなる
恥ずかしくて、でも、すごくすごく嬉しくて
小さく答えると、
火神先輩は窓の向こうで少しだけ目を丸くして、
でもすぐに照れたように視線を逸らした
通話が切れても、心臓のドキドキは全然止まらなかった
……火神先輩、ずるいよ……
小窓越しに見えた火神先輩の顔が頭から離れなくて、
私はしばらく布団の中でゴロゴロと転がり続けた












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。