昼前の組は珍しく静かだった。
皇后崎・花魁坂・無陀野・淀川・遊摺部・並木度・矢颪――
いつも忙しい七人が、今日はたまたま全員休みになったのだ。
花魁坂が腕を組んで、ソファに座る四季をのぞきこむ。
並木度がしゃがんで目線を合わせると、四季はぱあっと顔を明るくした。
四季がこんなに積極的に言うのは珍しい。
みんな顔を見合わせ、ほんの一瞬で答えが決まった。
皇后崎がそう言うと、四季の目がまん丸になった。
淀川が詳しく説明すると、四季はぽかんと口を開けた。
その元気すぎる返事に、七人全員の笑いがこぼれた。
モールに着いた瞬間、四季は完全にフリーズした。
ひとりじゃ絶対に飲み込まれそうな巨大な建物。
人の声、音楽、フードコートの匂い――全部が初めてで、目を瞬かせるだけ。
皇后崎が頭をポンと叩くと、四季はその袖をぎゅっと握った。
そこへ無陀野が四季の反対側から覗き込む。
四季はこくり。
無陀野の大きな手にちょこんと小さな手を重ねた。
すると――。
全員が四季の手を取りたくてざわつく。
四季はくすっと笑って、ぽつりと呟く。
その一言で七人の動きが止まった。
全員が胸を押さえて崩れ落ちそうになった。
モールに入ると、四季は完全にハイテンションになった。
矢颪がふきだす。
遊摺部が笑って説明すると
皇后崎が後ろから支えてエスカレーターに乗せると、四季は身体を固めた。
皇后崎の言葉で、四季は安心してすり寄った。
その横で、花魁坂がじとっと皇后崎を見る。
三階の広場に着くと、四季の視線が一点で止まった。
ペットショップの前に飾られている小さな犬のぬいぐるみ。
四季はまっしぐらに走ろうとする。
無陀野が慌てて抱き上げる。
四季がしょんぼりすると、並木度が手をあげた。
店に入ると、四季はガラス越しの子犬たちに目を丸くした。
ガラスに顔を押しつけそうになって、淀川に首根っこをつままれる。
その姿に、全員が笑ってしまった。
矢颪が聞くと、四季は少し考えてから首を横に振った。
花魁坂が感心したように言った。
その言葉でまた全員が撃沈した。
そのあとも、四季の“初めて”は続いた。
・大きな噴水に感動
・ゲームセンターの音にびくっとして花魁坂に抱きつく
・ソフトクリームをはじめて食べて笑顔爆発
・雑貨屋のキラキラに釘付け
・靴屋で矢颪に肩車されて喜ぶ
・フードコートで人の多さにびっくりして皇后崎の袖を掴む
どこへ行っても、四季はとにかく楽しそうで、七人はそれを見てずっと笑っていた。
皇后崎が聞くと、四季は満面の笑みで答えた。
全員の足が止まった。
並木度なんてしゃがみ込んで頭を抱えていた。
帰り際、四季は少し疲れたのか、淀川の腕の中でとろんと目を細めた。
淀川が言うと、四季は小さく笑った。
みんな口々にそう言って、眠そうな四季を守るように囲んだ。
その光景は、まるで――家族だった。
組に戻る頃には、四季は半分眠っていた。
珍しく組長が出迎えると、四季は無意識のままにっこり笑った。
その言葉に、組長だけでなく組員も思わず吹き出す。
四季はそのまま、真澄の胸に顔をうずめて眠った。
七人はそっと目を合わせ、微笑む。
――四季が“表の世界”で幸せを感じられる日が来るなんて。
皇后崎が小さく言った。
誰もが、その言葉にうなずいた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。