前の話
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雪が舞う冬の朝、駅のホームには冷たい空気が漂っていた。美咲はいつものように通勤電車を待ちながら、携帯を手にしていた。ふと目を上げると、目の前のベンチに座っている男性が見えた。厚手のコートを着て、静かに本を読んでいる彼。美咲はその姿を見て胸が少し痛んだ。彼の名前は翔太。高校時代の初恋の相手だった。
「なんで、こんなところで会うの…」
美咲は心の中でつぶやいた。大学進学を機に、翔太とは自然に疎遠になってしまった。それでも彼のことを忘れることはできず、心のどこかでいつも引っかかっていた。
その時、電車が到着する音がして、ホームに風が吹き抜けた。美咲は慌てて電車に乗り込んだが、気がつくと翔太も同じ車両に乗っていた。ドアが閉まり、電車が動き出す。美咲の胸は高鳴り、手が震えていた。次の駅で降りるか、それとも話しかけるか。何かが変わる気がして、彼女は迷っていた。
「すみません…」
美咲が意を決して声をかけると、翔太は驚いたように顔を上げた。そして、美咲を見て微笑んだ。
「美咲?久しぶりだね。」
その笑顔に、美咲の心が一気に暖かくなった。電車の中で立ちながら、二人は話し始めた。高校時代の思い出や、お互いの近況を語り合いながら、美咲は過去の思いが蘇るのを感じていた。
「こんなところで会うなんて、偶然だね。」翔太が言った。
「本当だね。でも、会えてよかった。」美咲は心からそう思った。
電車が終点に近づくにつれ、美咲は一つの決心をしていた。このままでは終われない。過去に伝えられなかった想いを、今度こそ伝えたい。電車が駅に到着すると、二人はホームに降り立った。冷たい風が吹き抜ける中、美咲は深呼吸をして言葉を紡いだ。
「翔太、私ね、ずっと言えなかったことがあるの。」
翔太は少し驚いたように美咲を見つめた。
「何?」
「高校の頃から、ずっと翔太のことが好きだったの。でも、言えなくて。大学に行ってからも、ずっと気になってた。」
その言葉に、翔太はしばらく黙っていた。そして、ゆっくりと微笑んで言った。
「俺も、美咲のことが好きだったよ。でも、進学で別れてから、もう言えないと思ってた。」
美咲の目に涙が浮かんだ。雪が舞い降りる中、二人の間に温かい気持ちが広がっていくのを感じた。
「そうだったんだ…」美咲は涙をぬぐいながら微笑んだ。「でも、今言えてよかった。」
「うん、俺も。」翔太は優しく頷いた。
二人はしばらくの間、静かに見つめ合っていた。雪が静かに降り積もる冬の朝、駅のホームで、二人の時間が止まったように感じられた。
「これから、また会えるかな?」美咲が尋ねた。
「もちろん。今度はちゃんと、君の隣にいさせてほしい。」翔太の言葉に、美咲は微笑みを返した。
「うん、ぜひ。」
冬の冷たい空気の中、二人は新しい一歩を踏み出した。雪はまだ降り続いていたが、彼らの心は暖かく、未来への期待で満たされていた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。