あれから俺は、たくさん身体を売るようになった。
週末のうちどちらか、または両方。
さらには平日の放課後にまで手を出し始めた。
相変わらず、身体を売るのは気持ちが悪い。
けど、その前、一緒に過ごすとき。
「かわいい」「すき」ってうわべだけでも言ってくれて。
俺のために何かを買ってくれて。
偽りではあるけれど、愛を注いでくれる。
何かが満たされたような気がした。
「かわいい」って言われるたびに、生きてていいんだって思える。
何かを買ってくれた時、俺は必要とされてるんだって感じて。
愛を注いでくれた時、俺を愛してくれる人がいるんだって泣いた。
傷だらけで、醜い色に染まった俺の身体。
特に特徴なんてない、平凡な姿。
真っ黒に染まった隈、腕中にある紅い線だって。
あの人たちは、俺の全てを受け入れてくれる。
「辛かったね」「大丈夫?」って言ってくれた人もいたし、
なんなら「一緒に住まない?」「助けてあげたい」
そう言ってくれた人もいた。
その言葉は、嘘かもしれない。
咄嗟に出た音の塊であって、中身なんてないのかもしれない。
でも、その一言一言に救われて、心が軽くなったような気がして。
ダメだ、いけないことだなんてわかってはいたんだけれど、どんどんこの仕事にのめり込んでいった。
心の拠り所だった。
話を聞いてくれた。優しい言葉をかけてくれた。
こんな俺を、あの人たちは愛してくれたんだ。
そのことが心にすとん、と落ちて気持ちがすっきりした。
だって、誰も俺の話なんて聞いてくれなかったんだもの。
初めてできた、相談相手だった。
でも、その代わり。
兄弟との溝は、どんどん深まっていった。
うるさい、うるさいうるさいうるさい。
俺のこと何も知らないくせに、知ったフリをするな。
家族ヅラすんな、こっちなんて見てくれなかったくせに。
今更何言ってるわけ?ほんとに理解できない。
仕事にのめり込むほど、家族で過ごす時間が減るほど、
兄弟が嫌いになっていった。
前の俺だと思うなよ、俺はもう強いんだ。味方もいる。
「こんな家、いつか絶対出ていってやる」
そういう結論に辿り着くのは割と早かった。
嫌いなら、気に入らないなら、会わないよう遠くへ行けばいい。
忘れるくらい幸せになってやればいいんだ。
貯金をする目的は、「家出をするため」に変わった。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!