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第5話

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2026/06/16 09:41 更新
 ショッピは、泣き続けるレパロウを何も言わず見守っていた。

 拒絶もしない。
 急かしもしない。

 ただ静かに、優しく頭を撫で続ける。

「……っ、ぅ……」

 レパロウは肩を震わせながら泣いた。

 今まで張り詰めていたものが全部溢れてしまったみたいだった。

 ショッピの手は不思議なくらい落ち着く。

 安心してしまう。

 どれくらい経っただろう。

 ようやくレパロウの涙が落ち着いてきた頃、ショッピが小さく口を開いた。

「……落ち着きました?」

「はい……すみません……」

「別にええです」

 ショッピは相変わらず淡々としている。

 けれど、その声は少し柔らかかった。

 レパロウは不安そうにショッピを見る。

「……俺は、どうすればいいですか」

 その問いに。

 ショッピは何故かレパロウをぐいっと抱き寄せた。

「え、ちょっ――」

「舌噛まんようにしてくださいね」

「は?」

 次の瞬間。

 ショッピは窓を開け、そのまま飛び降りた。

「ぇぇぇぇぇっ!?」

 風が一気に吹き付ける。

 レパロウは完全にパニックだった。

 ショッピはレパロウを抱えたまま、迷いなく夜の道を走っていく。

「ちょ、ショッピさん!?!?」
「静かに」

「いや無理ですって!?」

 何が起きているのか分からない。

 抱き寄せられた瞬間から情報量が多すぎる。

 そんな中、少し離れた場所に黒い車が見えた。

 車の横には二人の男が立っている。

 一人は緑のパーカーを着た男。

 茶髪で、目元は前髪に隠れて見えない。
 口元から覗くギザ歯が妙に目立っていた。

「お、ショッピ来た」

 もう一人はきっちりしたベスト付きの服。

 クリーム色の髪に、ほぼ白色に近い薄い瞳。

 静かな雰囲気の男だった。

「回収成功ですか」

「はい」

 ショッピは短く返す。

 レパロウだけが状況についていけていなかった。

「え、あの、誰……」

 緑パーカーの男がぐっと顔を近づけてくる。

「おぉ〜!この子がレパロウ?
 めっちゃ可愛ええ顔しとるやん!」

「えっ」

「ゾムさん距離近いです」

 エーミールが冷静にツッコむ。

「俺ゾム!よろしくな!」

「え、あ、はい……?」

 困惑しすぎて語尾が消える。

 エーミールはそんなレパロウを見て少しだけ苦笑した。

「話は移動中にしましょう」

 すぐに車が発進する。

 その直後だった。

 ビーッ!!ビーッ!!

 警報音が鳴り響いた。

「……うわ、バレた」

 ショッピが窓の外を見る。

 後方からS国兵士たちの車両が追ってきていた。

「逃がすな!!」

 怒号。

 銃声。

 レパロウの顔が青ざめる。

「っ……!」

 だが。

「ショッピ、右頼むわ」

「了解です」

 二人は妙に落ち着いていた。

 車の窓を開ける。

 そして。

 パンッ!!

 乾いた銃声。

 追ってきた兵士の武器が正確に撃ち抜かれる。

「なっ……!?」

 さらにゾムも笑いながら銃を構えた。

「ほいっと」

 パンッ!!

 次々と敵のタイヤや武器だけを正確に撃ち抜いていく。

 無駄がない。

 綺麗すぎる射撃だった。

 レパロウは呆然とそれを見ていた。

(……強い)

 ショッピだけじゃない。

 この人たち、全員。

 異常なくらい強い。

 気づけば追手は完全に撒かれていた。

 ◇

 数時間後。

 車は巨大な門の前へ到着する。

「着きましたよ」

 エーミールが静かに告げた。

 レパロウは窓の外を見る。

 そこにはS国とは比べ物にならないほど大きな軍事国家――我々国が広がっていた。

「……っ」

 緊張で身体が強張る。

 ここは敵国だった場所。

 本当に受け入れてもらえるのか。

 怖かった。

 そんなレパロウの様子に気づいたのか、ショッピが隣で言った。

「そんな緊張せんでも大丈夫やで」

「……でも」

「皆そんな怖ないです」

 その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。

 門を通り、中へ入る。

 そのまま総統室へ案内された。

 レパロウはもうガチガチだった。

 緊張と恐怖で手が震えている。

「失礼します」

 ショッピが扉を開ける。

 その瞬間。

「おぉーーー!!!」
「来たーーー!!!」
「ほんまに連れて来たんか!?」

 盛大すぎる歓迎が飛んできた。

「……へ?」

 レパロウが固まる。

 部屋には沢山の人がいた。

 金髪に赤い目の総統、グルッペン。
 眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気のトントン。
 赤と白のサッカーユニフォーム姿ののコネシマ。
 タバコを吸い気だるげな鬱先生。
 笑っているが少し圧が出ているオスマン。
 少し後ろで静かに微笑むひとらんらん。
 長い紙面をした優しそうなしんぺい神。
 紫のマフラーに穏やかな雰囲気の兄さん。
 赤い色に白いボーダーが入ったパーカー姿のシャオロン。
 短い紙面を付けた小柄なロボロ。
おかしなメガネをかけ、ヘラヘラしているチーノ。
 そしてゾム、エーミール。

 全員が興味津々でレパロウを見ていた。

「え、かわい」
「思ったよりちっちゃいな?」
「ショッピが連れて帰りたがる訳やわ」

「ちょ、ちょっと待ってください!?」

 レパロウは完全に押されていた。

「S国ってどんな感じなん!?」
「好きな食べ物何!?」
「ショッピのことどう思っとる?」

「えっ!?!?」

 質問が止まらない。

 レパロウは処理しきれず目を回しそうになる。

 そんな中。

 少し後ろに立っていたショッピだけが、小さく笑っていた。

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