ショッピは、泣き続けるレパロウを何も言わず見守っていた。
拒絶もしない。
急かしもしない。
ただ静かに、優しく頭を撫で続ける。
「……っ、ぅ……」
レパロウは肩を震わせながら泣いた。
今まで張り詰めていたものが全部溢れてしまったみたいだった。
ショッピの手は不思議なくらい落ち着く。
安心してしまう。
どれくらい経っただろう。
ようやくレパロウの涙が落ち着いてきた頃、ショッピが小さく口を開いた。
「……落ち着きました?」
「はい……すみません……」
「別にええです」
ショッピは相変わらず淡々としている。
けれど、その声は少し柔らかかった。
レパロウは不安そうにショッピを見る。
「……俺は、どうすればいいですか」
その問いに。
ショッピは何故かレパロウをぐいっと抱き寄せた。
「え、ちょっ――」
「舌噛まんようにしてくださいね」
「は?」
次の瞬間。
ショッピは窓を開け、そのまま飛び降りた。
「ぇぇぇぇぇっ!?」
風が一気に吹き付ける。
レパロウは完全にパニックだった。
ショッピはレパロウを抱えたまま、迷いなく夜の道を走っていく。
「ちょ、ショッピさん!?!?」
「静かに」
「いや無理ですって!?」
何が起きているのか分からない。
抱き寄せられた瞬間から情報量が多すぎる。
そんな中、少し離れた場所に黒い車が見えた。
車の横には二人の男が立っている。
一人は緑のパーカーを着た男。
茶髪で、目元は前髪に隠れて見えない。
口元から覗くギザ歯が妙に目立っていた。
「お、ショッピ来た」
もう一人はきっちりしたベスト付きの服。
クリーム色の髪に、ほぼ白色に近い薄い瞳。
静かな雰囲気の男だった。
「回収成功ですか」
「はい」
ショッピは短く返す。
レパロウだけが状況についていけていなかった。
「え、あの、誰……」
緑パーカーの男がぐっと顔を近づけてくる。
「おぉ〜!この子がレパロウ?
めっちゃ可愛ええ顔しとるやん!」
「えっ」
「ゾムさん距離近いです」
エーミールが冷静にツッコむ。
「俺ゾム!よろしくな!」
「え、あ、はい……?」
困惑しすぎて語尾が消える。
エーミールはそんなレパロウを見て少しだけ苦笑した。
「話は移動中にしましょう」
すぐに車が発進する。
その直後だった。
ビーッ!!ビーッ!!
警報音が鳴り響いた。
「……うわ、バレた」
ショッピが窓の外を見る。
後方からS国兵士たちの車両が追ってきていた。
「逃がすな!!」
怒号。
銃声。
レパロウの顔が青ざめる。
「っ……!」
だが。
「ショッピ、右頼むわ」
「了解です」
二人は妙に落ち着いていた。
車の窓を開ける。
そして。
パンッ!!
乾いた銃声。
追ってきた兵士の武器が正確に撃ち抜かれる。
「なっ……!?」
さらにゾムも笑いながら銃を構えた。
「ほいっと」
パンッ!!
次々と敵のタイヤや武器だけを正確に撃ち抜いていく。
無駄がない。
綺麗すぎる射撃だった。
レパロウは呆然とそれを見ていた。
(……強い)
ショッピだけじゃない。
この人たち、全員。
異常なくらい強い。
気づけば追手は完全に撒かれていた。
◇
数時間後。
車は巨大な門の前へ到着する。
「着きましたよ」
エーミールが静かに告げた。
レパロウは窓の外を見る。
そこにはS国とは比べ物にならないほど大きな軍事国家――我々国が広がっていた。
「……っ」
緊張で身体が強張る。
ここは敵国だった場所。
本当に受け入れてもらえるのか。
怖かった。
そんなレパロウの様子に気づいたのか、ショッピが隣で言った。
「そんな緊張せんでも大丈夫やで」
「……でも」
「皆そんな怖ないです」
その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。
門を通り、中へ入る。
そのまま総統室へ案内された。
レパロウはもうガチガチだった。
緊張と恐怖で手が震えている。
「失礼します」
ショッピが扉を開ける。
その瞬間。
「おぉーーー!!!」
「来たーーー!!!」
「ほんまに連れて来たんか!?」
盛大すぎる歓迎が飛んできた。
「……へ?」
レパロウが固まる。
部屋には沢山の人がいた。
金髪に赤い目の総統、グルッペン。
眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気のトントン。
赤と白のサッカーユニフォーム姿ののコネシマ。
タバコを吸い気だるげな鬱先生。
笑っているが少し圧が出ているオスマン。
少し後ろで静かに微笑むひとらんらん。
長い紙面をした優しそうなしんぺい神。
紫のマフラーに穏やかな雰囲気の兄さん。
赤い色に白いボーダーが入ったパーカー姿のシャオロン。
短い紙面を付けた小柄なロボロ。
おかしなメガネをかけ、ヘラヘラしているチーノ。
そしてゾム、エーミール。
全員が興味津々でレパロウを見ていた。
「え、かわい」
「思ったよりちっちゃいな?」
「ショッピが連れて帰りたがる訳やわ」
「ちょ、ちょっと待ってください!?」
レパロウは完全に押されていた。
「S国ってどんな感じなん!?」
「好きな食べ物何!?」
「ショッピのことどう思っとる?」
「えっ!?!?」
質問が止まらない。
レパロウは処理しきれず目を回しそうになる。
そんな中。
少し後ろに立っていたショッピだけが、小さく笑っていた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。