“ 送るって言ったはいいけど “
“ 家知らなかった .. “
そう呟く先輩に簡単に道を説明して
安全運転で家の前まで送って貰った .
“ これくらいさせて ? “
良いでしょ ? とでも言いたげな表情で
簡単に拒否出来ないその仕草に
私はあっさりと負けてしまって ,
急にそんな事を言い始める先輩 .
勢いに押されて家督を開くと
先輩がそれを取って何かを入力する .
“ じゃあまた明日 “
そう言って車に乗って去って行く .
終始何が起こったか分からなくて ,
玄関前に突っ立ったまま
状況を理解するのに時間が掛かる .
公私を完全に分ける先輩が
私のスマホに連絡先を入れるなんて
考えられなかったから .
変な事考えるな私 ..
そう自分に言い聞かせて家に入る .
ご飯を食べるには遅すぎる時間だったから
そのままシャワーを浴びて寝る支度を終える .
寝ようとベッドに入った時 ,
スマホから着信を知らせる音 .
「 お疲れ様 」
「 明日さ 」
「 迎えに行ってもいい ? 」
「 お節介なの分かってるけど 」
可愛い猫のアイコンと共に
何個もの吹き出しが連ねてあった .
「 お願いします 」
可愛いなぁ ..
そんな事を考えていたら
何となくで返してしまったその返事 .
数十秒後に既読がついて ,
「 潔くて宜しい ㅎ 」
なんて送られて来て .
口に出すとより恥ずかしさが増して
明日も早いから寝なきゃ ..
そう自分に言い聞かせて深く布団を被った .
next _
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!