ほらまた。しょっぴーの隣を選んだ。
前なら必ず、俺の隣に来てたのに。
エンターテイメントだと思ってるんだろ。
俺が阿部ちゃんを毎回選んで、好きだって言ってきたこと。
あからさまに庇ってきたこと。
優しいきみはそうだよね。
ファンの人たちの心理を読んで、俺のこと好きなふうにしてる方がいいって思ってやってる。
でも俺は違う。
だからあの時阿部ちゃんの名前を出さなかった。
スタッフ「じゃあ、メンバーで結婚するなら誰がいいか。選んでくださいー」
仕事中に言うのをやめたら、もっと信じてくれるかと思ったんだよ。
俺はとっくに、本気で好きになってたから。
あの時、阿部ちゃんのちょっと傷ついた顔を見て、少し嬉しかった俺は最低だと思う。
でもあれから君は、俺のとこに来なくなった。
俺だけに見せてた上目遣いも、照れた顔も、毎日言ってくれてたおやすみの一言も。
俺がきみのことを好きって言わないなら、
もう俺とのコンビの需要は終わったって思ったんだろう。
その代わり身の早さに、ほんとに1ミリも俺のこと好きじゃなかったんだ、あれは全部アイドルとしての振る舞いだったんだ、と痛感する。
突然顔を覗き込まれて、ドキッとした。
心配そうにしてるその顔は、俺がずっと欲しかったものだ。
一瞬、夢かと思った。
自分の眉間をトントン、と突いて見せながら首をかしげる。
いや、可愛いから、、
あざと、、
考え込みすぎて、すごい顔をしてたのを見兼ねたんだろう。
俺そんなに顔に出てたか、、?
これは、メンバーとしてのケア。
自分のポジションをよく分かってる、姫としてのケア。
分かってて、
それでも気にかけてもらえて嬉しいなんて。
どうしたんだよ、俺、、
こんなのらしくないだろ。
俺はふっと笑って、阿部ちゃんの眉間をちょん、と突いた。
君の好きな俺は知ってる。
こういう、恋人みたいなやりとりが好きなことも。
全部分かってるのに、手に入らない。
しょっぴーの後ろをついてパタパタと走り去る阿部ちゃん。
全然会えないのと、こんなに近くにいるのに届かないのと
どっちが辛いんだろう。
そばにいればいるほど恋人みたいに錯覚するのが辛くて、俺のものにならないなら離れたほうがいいって思ってた。
だけどそれが消えるのがこんなに辛いなら、現実がこんなに悲しい結果になるなら、ただ大切にすればよかったんだ。
ただ、あの甘い時間に酔ってればよかったんだ。
そうすれば俺はまだ、君の恋人でいられた。
例えそれが、カメラが回ってる時だけだったとしても。
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。