第10話

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2024/03/26 01:00
大河の傍で寝てから、3週間が経った。

つまり、大河の部屋に帰らなくなって早1ヶ月。

仮眠室では、玲香さんと大河が交互で傍に居てくれるようになった。

しかし、大河は山田さんの事を知らない。

山田さんは、相変わらず私に声をかけてきた。

そして、相変わらずゴミは荒らされ、隠し撮り写真は毎日届いた。

家で洗濯している時間は勿論ない。

なので……
あなた
本当にごめん、澪ちゃん…………
服、洗ってもらってもいいかな……
澪ちゃんにお願いしている。

勿論、ナースエイドの仕事に必要なものを優先し、時間が開けば、ということで洗ってもらっている。
桜庭澪
分かりましたー……って
うわ、また隈が酷くなってますよ
あなた
……本当?
桜庭澪
ちゃんと寝てるんですか?
あなた
寝てるよー……
桜庭澪
………今ってそんなに忙しいんですか?
あなた
え?
桜庭澪
病院に泊まってますよね?
あなた
あー……うん、そうなんだよね
目が離せない患者さんが居て……
桜庭澪
大変ですね……
私に出来ることがあれば
遠慮なく言ってくださいね!
あなた
ありがとう……
本当に助かります……
小野夏芽
最近家に帰ってます?
あなた
うん、お昼にね……
いつもならここにずっと居たいと思えるのに、今は離れたいと思ってしまう。

ここに居たら、根掘り葉掘り聞かれそう。
あなた
……じゃあ、澪ちゃん
申し訳ないんだけど、よろしく……
桜庭澪
あ、はい
私は部屋を出た。

最近は、近くに山田さんが居ないか警戒していて中々心が休まらない。

小さな物音にも、ビクついてしまう。

こんなの、何かありましたって周りに知らせているようなものだ。
山田太郎
あなた先生
あなた
振り返ると、笑顔の山田さんが居た。
あなた
山田、さん…………
山田太郎
最近、家に帰られてます?
あなた
え…………
山田太郎
ちゃんと休まれてますか?
あなた
……休んでますよ
山田太郎
そうですか……
では、何故そんなに目の下に
隈を作ってるんですか?
あなた
……仕事が終わらなくて
山田太郎
仕事熱心なのもいいですが……
自分大切にしてくださいね?
あなた先生が倒れたら
助かる命も助からないので
あなた
……そう…ですね…………
ご忠告ありがとうございます
では私、手術を控えてますので
私は頭を下げて山田さんの隣を通り抜ける。

山田さんは追っては来なかった。

走りたい。

走って逃げ出したい。

早歩きで廊下を歩く。

廊下の角まで行ったところで、誰かにぶつかりそうになる。

今回はぶつかる寸前で止まることが出来た。
あなた
す、すみません……
小野夏芽
こっちこそすみませ……あなた先生?
ぶつかりそうになったのは夏芽さんだった。
あなた
夏芽、さん……
小野夏芽
どうしたの?
顔色、めちゃくちゃ悪いけど
あなた
……大丈夫です
小野夏芽
体調悪いの?
仮眠室行ってきな?
あなた
いえ、本当に大丈夫です
本当に…………
あ、ヤバい……

目の前がチカチカする……
小野夏芽
?あなた先生?
私は夏芽さんの声を遠くに感じたまま、意識を手放した。

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