第7話

逃者の影
3
2025/10/20 16:43 更新
市役所の中は、人のざわめきと焦げた匂いで満ちていた。
倒れた椅子、濡れた床、壁に貼られた「ペア募集」の紙。
誰もが怯えた目でスマホを握りしめ、次のじゃんけん相手を探している。
朝倉陽斗
やっぱり、まるで避難所だな
陽斗が小声で言う
あなたは頷きながら、周囲を見回した。
声を潜めて泣く子ども、手を取り合う家族。
でも、そんな人々の中で――ひときわ静かな一角があった。
テーブルを囲む三人の男女。
そのうち一人のスマホが、ふっと光った。
画面には一瞬だけ、見覚えのある文字が映った。
【ログイン完了】
あなた
陽斗、見た?
朝倉陽斗
見た。間違いない、あの三人――「逃れた者」だ
三人はテーブルに顔を寄せ、何かを話している。
声は小さいが、真剣さが空気を刺した。
逃れた者A
本部からの信号、まだ届かないのか?
金髪の青年が言う
逃れた者B
来ない。サーバーが落ちてるか、誰かが遮断した。
眼鏡の女性が眉を寄せた
逃れた者B
このままじゃ、私たちまで消されるかもしれないわ。
逃れた者A
は? 俺たちは勝者だぞ?
逃れた者B
でも、“ルール違反者を報告しなかった「逃れた者」は……例外なく処分対象。
あなたは息を呑んだ
あなた
(陽斗が言ってた人もルール違反者を報告しなかったから…)
逃れた者A
……“北の通信塔”まで行くしかないな。あそこに中枢がある。
あなたは陽斗を見る
あなた
……通信塔。もしかして、ゲームの要?
陽斗は頷いた
朝倉陽斗
多分な。そこに行けば、全部わかる――
陽斗の言葉が途中で切れる。
一人の「逃れた者」が、ふとこちらを見たのだ。
逃れた者A
……おい、誰か聞いてんぞ。
あなたと陽斗は同時に息を止めた。
人の波の陰に身を隠し、棚の裏へ滑り込む。
足音が近づく
逃れた者A
……「逃れた者」様の会話を盗み聞きするなんて、いい度胸だな
低い声が響いた

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