市役所の中は、人のざわめきと焦げた匂いで満ちていた。
倒れた椅子、濡れた床、壁に貼られた「ペア募集」の紙。
誰もが怯えた目でスマホを握りしめ、次のじゃんけん相手を探している。
陽斗が小声で言う
あなたは頷きながら、周囲を見回した。
声を潜めて泣く子ども、手を取り合う家族。
でも、そんな人々の中で――ひときわ静かな一角があった。
テーブルを囲む三人の男女。
そのうち一人のスマホが、ふっと光った。
画面には一瞬だけ、見覚えのある文字が映った。
【ログイン完了】
三人はテーブルに顔を寄せ、何かを話している。
声は小さいが、真剣さが空気を刺した。
金髪の青年が言う
眼鏡の女性が眉を寄せた
あなたは息を呑んだ
あなたは陽斗を見る
陽斗は頷いた
陽斗の言葉が途中で切れる。
一人の「逃れた者」が、ふとこちらを見たのだ。
あなたと陽斗は同時に息を止めた。
人の波の陰に身を隠し、棚の裏へ滑り込む。
足音が近づく
低い声が響いた











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。