残穢というものはよく人を現すと思う。
傑のは深緑の上品な香の香り
らしきものが薄く漂う。
硝子のは茶色味のあるコーヒーと
微かにタバコの香り。
あとは、なんだっけ、あと一つは、___
夜に寿司の出前でもとるかと仄めかすと、
行きがけよりかなり仲良くなっていると
見える二人を眺めて目を細める。
途端、二人の体に付く残穢に脳内で何かが奔った。
___そうだった。思い出した。あと一つ、
それは呪いの残骸と呼ぶにはあまりにも綺麗で、
呪いよりももっと優しくて、あたたかい。
傷口に絆創膏を貼るみたいに、
ただ寄り添っているだけの呪力。
・
"ちょっとしたおまじないだよ(笑"
・
彼女はいつもそう言って
仲間の頭にそっと触れていた。
"これで平気。死ぬことはないから。"
"……まぁ、痛い思いはするけどね。"
声が蘇る。
無邪気な調子で、
それでいて絶対の安心をくれた声。
見間違えるはずもないまだ
新しい呪力の残穢に胸が苦しくなる。
きっと脳が都合良く解釈しているだけ。
当の本人は死んでいる。
わかっていても頬が緩んでしまうのは、
きっとあの頃の燻りに触れたせいだ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!