第2話

潜書先
432
2020/11/22 11:08
 目を開けると、そこは静かな村だった。空は、満天とまではいかぬ星空。月は、少し欠けている。辺りでは、虫達が大合唱を開いている。
 人々の活動音が無いせいか、その合唱はより大きく聞こえる。
 静かな村とはいえ、虫達の合唱を聴いている。にも関わらず、太宰はどこか静かすぎる様に感じた。
そして、辺りを見回す。ふと気づく。____織田作と安吾がいない。
太宰治
えぇ……俺一人?二人共どこに出たんだよ……。
 異様な静けさの原因は、それか。と太宰は思う。時折一人で潜書するものの、普段は三人でいる。それは佐藤春夫に、三羽烏と言われる程。
 侵食者がくれば、いつも二人を巻き込んで戦う。二人は嫌々言うが、結局共に戦ってくれる。
____寂しい?
 何故二人がいないだけでこんなにも静かに感じるのか。辺りでは煩い程に虫達が大合唱を開いているではないか。
 寂しいから、心の隙間が____
太宰治
ぜーったいに違う!
 強がる様に首をふった。
太宰治
仕方ない奴らだな……この俺が侵食者をパパッと倒して、二人を見つけに行ってやろうじゃん
 そう意気込むが早いか、早速村を駆ける。侵食者の手掛かりを捜すために。
 二人を____ために。

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