目を開けると、そこは静かな村だった。空は、満天とまではいかぬ星空。月は、少し欠けている。辺りでは、虫達が大合唱を開いている。
人々の活動音が無いせいか、その合唱はより大きく聞こえる。
静かな村とはいえ、虫達の合唱を聴いている。にも関わらず、太宰はどこか静かすぎる様に感じた。
そして、辺りを見回す。ふと気づく。____織田作と安吾がいない。
異様な静けさの原因は、それか。と太宰は思う。時折一人で潜書するものの、普段は三人でいる。それは佐藤春夫に、三羽烏と言われる程。
侵食者がくれば、いつも二人を巻き込んで戦う。二人は嫌々言うが、結局共に戦ってくれる。
____寂しい?
何故二人がいないだけでこんなにも静かに感じるのか。辺りでは煩い程に虫達が大合唱を開いているではないか。
寂しいから、心の隙間が____
強がる様に首をふった。
そう意気込むが早いか、早速村を駆ける。侵食者の手掛かりを捜すために。
二人を____ために。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。