第8話

pi × 精神病
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2024/08/18 10:04 更新
『ぺんちゃん』


pi「んー?」


『あ、ごめん仕事中か』


pi「今大丈夫だよ編集だから」


『ううん、また今度でいいよ。』











そう言って、俺の彼女は部屋のドアを閉めた。


冠さんの高校時代の友達で一回会った時に話があって、それから彼女の方からアプローチしてくれて


彼女なんていたことなかった俺はびっくりして、告白されて即OKしてしまった。


でも一緒にいるうちに大好きになってしまった。


同棲を初めて早半年。


あなたは絶対に俺が編集中や撮影の時に、話しかけてこない。


今のも稀に仕事中に入ってきても、即出ていく。


絶対なにか用があって、来てるはず。


流石に撮影中に話すのはダメだけど、編集ならいくらでも手を止められる。


あなたのためなら大丈夫なのに。









まぁ後で話をしてくれるなら、それでいいと思うだろう。


でもあなたには、とある持病がある。


解離性健忘症と言って、過去のトラウマや幼少期に誤ったことを学習したことのせいで


自分にとって必要な情報を思い出せなくなる症状のことだ。


他人のことならいくらでも覚えられる、だけど自分のことはすらすらの頭から離れていってしまうらしい。


特に嫌なことが起きた場合。


人に怒られることが苦手なあなたは、怒られながら教えられたことを何も思い出せなくなる。


だからもし今あなたが言いたかったことを、あなたの気持ち次第で忘れてしまったら


俺はあなたが言いたかったことが、分からないのだ。











pi「……もしもし冠さん?」


〈はい?〉


pi「ちょっと相談あるんですけどいいすか?」


〈なんでしょう?〉


pi「明日の撮影休ませてほしいんです。あなたのことで色々あって」


〈ナルホド〉


pi「皆からは俺から連絡します」


〈了解です。〉


pi「よろしくお願いしまーす」











決めた。


明日はずっとあなたと一緒にいよう。


























『あれ?今日撮影じゃなかったっけ?』


pi「ん?今日は違うよ」


『え?でもカレンダーにそう書いたんだけど』


pi「…冠さんの手違い」


『なるほどね』


pi「…今日休みだよね」


『うん』


pi「一緒になんかしようよ」


『!』


pi「何したい?」


『一緒にいてくれるの…?』


pi「うん。最近忙しくてごめん。」


『嬉しい…!ありがとう!』











可愛い笑顔を見るのは、やっぱり嬉しいな。


今日は良くないことをしまくろうとのことで、ベッドのそばにデスクを置いて


ジュースやらポテチやら、アイスなんかも用意して


2人でベッドにダイブした。


最近買ったプロジェクターをベッドの先に設置して、映画を見た。











pi「うわぁ!?」


『あはは笑。ぺんちゃんびっくりしすぎ笑』


pi「なんであなたは平気なの…!?」


『だって怖くないもん笑』


pi「嘘だ!」











見る映画がホラー映画だとは聞いてない。


例の排水溝からピエロが覗いているあの映画を見て、あなたを盾にチラ見が限界。


食いちぎられた…!?











『ふふっ笑。久々にこんなに笑ったなぁ』


pi「……本当?」


『うん!』


pi「最近、笑ってなかったってこと?」


『うーん……』











黙り込んでしまった。


チラリとスマホを見ると、最近のスケジュールは仕事でほぼ埋まっていた。


全然あなたとの時間を作ってなかった。


仕方ないとはいえ、あなたにも仕事があるとはいえ


寂しい思いをさせてしまった。











pi「…ごめんね。これからはちゃんと時間作る」


『そんな……私は大丈夫だよ。待ってくれてる人達に動画を届けなきゃ』


pi「俺にとって一番はあなたなんだよ。そんなの後でいい」


『そんなのって………そんなこと言っちゃダメだよ。私頑張って待ってたのに、私の努力が無駄になるし……』


pi「なんで我慢するの?そんなの俺とあなたのためになってないよ」











俺がそういうとあなたは悲しそうな顔をして、そっぽを向いた。


傷つけてしまった。


怒ってしまった。


俺は慌てて謝った。


でも、きっと……


もう手遅れだ。











『……』


pi「ごめん。ごめんあなた」


『…』


pi「嘘だよ。大丈夫、分かってる。あなたが俺のために我慢してくれてた。それを俺はあんなこと言って…」


『……ぺんちゃん…』











あぁ、やっぱり


間に合わなかった。











『ごめんなさい…』


pi「……ううん。言わなくていい。分かってるから」


『ごめんなさいっ…』


pi「謝らなくていいんだよ。大丈夫」











俺の方こそ、ごめん。











『ぺんちゃん……私…』


pi「……うん…」











『……何言おうとしたか、わからなくなっちゃった……』





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