パスタ屋さんを出ると、夏の日差しが少しだけ柔らかくなっていた。
🍌「スタバ、あっちだよ。」
「そっちだったか!」
🍌「ははっ。」
そんなやり取りをしながら歩く時間さえ楽しい。
学校では話すことなんてほとんどなかったのに、不思議なくらい会話が途切れない。
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店内に入ると、コーヒーの香りがふわっと広がった。
🍌「何飲む?」
メニューを見ながら悩む。
「ん〜……。」
🍌「迷ってる?」
「すごく迷ってる(笑)」
🍌「優柔不断だもんね。」
「覚えてるんだ。」
🍌「さっき言ってたじゃん。」
その何気ない一言が、少しだけ嬉しい。
“ちゃんと覚えてくれてる。”
そんな小さなことが、胸を温かくした。
🍌「おすすめある?」
「私はいつもこれ!」
指をさしたのは、いつも頼むお気に入りのフラペチーノ。
🍌「じゃあ俺もそれにしようかな。」
「え?」
🍌「ハズレないんでしょ?」
「たぶん!」
🍌「“たぶん”か(笑)」
二人で笑う。
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ドリンクを受け取って、窓際の席に座る。
「いただきます。」
🍌「いただきます。」
一口飲んだ音くんが少し驚いた顔をした。
🍌「おいしい。」
「ほんと?」
🍌「うん。」
🍌「これ好きかも。」
「よかった〜!」
なんだか自分が褒められたみたいで、自然と笑顔になる。
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窓の外では、家族連れや学生たちが楽しそうに歩いている。
店内には静かな音楽が流れていた。
🍌「休みの日って何してるの?」
「買い物かな。」
🍌「やっぱり。」
「え?」
🍌「服好きって言ってたし。」
「そうそう!」
「音くんは?」
🍌「野球ばっかり。」
「やっぱり(笑)」
🍌「あとは、ゲーム。」
「ゲームするの?」
🍌「するよ。」
「意外!」
🍌「よく言われる(笑)」
学校では知らなかった音くんが、一つずつ増えていく。
野球が好きなこと。
ゲームもすること。
笑うと目が少し細くなること。
照れると耳が赤くなること。
全部が新しくて。
全部が、もっと知りたくなる。
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少しして。
🍌「そういえば。」
「うん?」
🍌「修学旅行の写真。」
「え?」
🍌「お気に入りある?」
思わずスマホを取り出す。
「これかな。」
ジンベエザメの前で並んで笑っている一枚。
友達が撮ってくれた写真だった。
🍌「俺もそれ。」
「ほんと?」
🍌「自然に笑えてる。」
「確かに(笑)」
少しだけ沈黙が流れる。
でも、その沈黙は嫌じゃなかった。
お互い同じ写真を見つめながら、小さく笑う。
🍌「あの日、誘ってよかった。」
……
胸がどくんと鳴る。
「私も。」
小さく答える。
「すごく嬉しかった。」
音くんは照れたように視線をそらしながら笑った。
🍌「よかった。」
その二文字だけなのに。
何度も心の中で繰り返してしまう。
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気づけば時計は夕方を指していた。
「もうこんな時間。」
🍌「ほんとだ。」
少し名残惜しい。
まだ帰りたくない。
そんな気持ちは、きっとお互い同じだった。
🍌「そろそろ駅行こっか。」
「うん。」
カップを片付けて、二人並んで店を出る。
駅までの道は、行きより少しだけ静かだった。
でも、その静けさは気まずいからじゃない。
何かを伝えたい。
そんな空気が、少しずつ流れ始めていた。
このとき私は、まだ知らなかった。
駅のホームで聞く、たった一言が。
これから先も、ずっと忘れられない言葉になることを。
続きは、明日の12:00公開です。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。