翔飛 side
お兄さんたちが出ていってから、
俺達2人はリビングで駄弁っていた。
なんて駄弁っていたら、
3人は部屋から出てきた。
薄っすらと見える父さんの部屋は薄汚れていて
誰も手入れはしてないだろう。
まぁ俺も父さんのことは嫌いやし
やらないんやけどね。
なんて考えていたら扉はしまって、
俺の番が来た。
エミさんは、
チーノのときと同じようなことを言うと
慣れたように階段を上がる。
なんて届くはずのない抵抗を述べながら、
結局俺の部屋に引きずられ扉を開いた。
仕方がないから、
チーノが座る方とは反対の座布団に座らせて
俺はいつもの座布団をエミさんと
対面になるようにおいた。
嬉しそうにふわりと笑うエミさん。
俺は少し雑談したい気分になって
部屋について触れた。
こうして少し雑談を挟むのが俺は好き。
友人と話しているときのようで気持ちがほぐれる。
最初にエミさんにそう伝えたから、
俺が好きな会話をスムーズにしてくれて
嬉しかった。
そして少し雑談を交えたあと、
また真剣な会話に戻る。
そういって優しく笑う彼。
いつもの彼で少し安心しながら、
自分が思うことを伝えた。
エミさんは、喧嘩の仲裁をするように
兄さんたちのことを俺に教えてくれた。
「特に悪く思っている点はない」こと、
「喋りかけたらきっと喜ぶ」こと、
「うまく喋れなくても許してくれるだろう」こと。
他にもいろんなことを教えてくれた。
お陰で俺の気持ちは少し軽くなった気がする。
そして、最後まで重い空気で終わるのは嫌なので
俺はまた雑談をした。
なんて煽れば
「君たちほんとに似てるんやから...」
と、困ったように眉を下げるエミさん。
その行動にまた幸せが溢れた。
自分で言った「おじいちゃん」という言葉に、
俺は少し不快感を覚える。
俺はその気持ちを何処かに押しやるために、
小さな声でつぶやいた。
それを聞き取ったのか、
エミさんは、ニッコリと微笑んで言った。
これじゃ、押しやろうにもおしやれへんやん。
なんて喉元まで出かかった言葉は飲み込んだ。
そう言ってエミさんは家を背に歩いていった。
次会えるのは1ヶ月後らしい。
少し淋しいが、彼も仕事なので仕方がないことだ。
俺は自分にそう言い聞かせて
流れのまま部屋にそそくさと戻った。
さっきまでエミさんがいたと告げる匂いで、
淋しくなりながらベッドに横になる。
なにかを考える気力もわかず、
だからといって眠ることもできない。
いつメンのディスコードを見れば、
「作業通話」という名とともに数時間から
通話していたようだ。
面倒だし、とりあえず入るか...と思い
マイクをセットして
パソコンから入室ボタンを押した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。