朝っぱらに森に向かえば、そこにはもう男がいた。
彼岸花だらけの神社を抜けると、段々と地面に生えた彼岸花が減っていくのがわかる。
先程までぽつりぽつりと点在していた彼岸花も、とうとう見えなくなった。
ここは、彰人にとって、禁足地ではない。
そして、あの神社から出ないことを命じられていたこの男にとって、ここは禁足地なのだろう。
名前だけ告げて、無言が訪れる。
先程から、ずっとそうだ。
当然とも言える。
彰人にとっても、冬弥にとっても、会話を交わす必要性なんてどこにもない。
歩きながら進んでいたところ、彰人は冬弥が後ろの方でゆっくりと歩いていることに気づく。
先程まで、もっと近くにいたはずだ。
体力的に厳しくなってきたのだろう、と察する。
ふと、疑問に思った。
鬼の見た目をしている割には、些か体力が少ない気がする。
だが、まぁ、あの神社の敷地内でほとんど動かなければそんなものだろう。
独り合点して、彰人は声を掛ける。
謝罪をして、冬弥はすぐ近くの木の根に腰を下ろした。
彰人は座りたいというほど疲れている訳でもないが、座っていた方が楽なのも事実なので、なんとなく冬弥の真正面に腰掛ける。
冬弥の肌の色が薄い気がした。
彰人は、己の手と冬弥の顔を見比べる。
やはり白いな、と思った。
あの神社は、神社付近の木が全て伐採されているため、意外と日光が当たる。
それにしては、やけに肌が白い。
妖を体内に取り込むと、そんなところにまで影響が出るのかと驚く。
角が生え、鉤爪を持ち、肌は白くなる。
妖を取り入れるだけで、ここまで変化してしまうのだ。
もしかしたら、鬼の体つきをしている割に体力が少ないのもそうかもしれない。
人の体でありながら鬼の体に近づくなんて本来有り得ないから、対応できておらず、鬼のような体力は得られない、とか……
そこまで考えて、彰人は思考を放棄し、深いため息を吐く。
__姉の為にこいつを利用している自分に、心配する資格などない。
この旅はまだ序章である。
こいつには、還らずの泉まで向かって、その後、あの神社まで帰ってもらわなくてはいけないのだ。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!