第3話

参 取り入れる
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2026/01/08 12:00 更新
朝っぱらに森に向かえば、そこにはもう男がいた。

彼岸花だらけの神社を抜けると、段々と地面に生えた彼岸花が減っていくのがわかる。

先程までぽつりぽつりと点在していた彼岸花も、とうとう見えなくなった。

ここは、彰人にとって、禁足地ではない。

そして、あの神社から出ないことを命じられていたこの男にとって、ここは禁足地なのだろう。
彰人
彰人
……なぁ、名前なんだ
???
???
……名前、ですか
冬弥
冬弥
冬弥です
彰人
彰人
オレは彰人だ
名前だけ告げて、無言が訪れる。

先程から、ずっとそうだ。

当然とも言える。

彰人にとっても、冬弥にとっても、会話を交わす必要性なんてどこにもない。



歩きながら進んでいたところ、彰人は冬弥が後ろの方でゆっくりと歩いていることに気づく。

先程まで、もっと近くにいたはずだ。

体力的に厳しくなってきたのだろう、と察する。

ふと、疑問に思った。

鬼の見た目をしている割には、些か体力が少ない気がする。

だが、まぁ、あの神社の敷地内でほとんど動かなければそんなものだろう。

独り合点して、彰人は声を掛ける。
彰人
彰人
休憩するか?
冬弥
冬弥
…………すみません
謝罪をして、冬弥はすぐ近くの木の根に腰を下ろした。

彰人は座りたいというほど疲れている訳でもないが、座っていた方が楽なのも事実なので、なんとなく冬弥の真正面に腰掛ける。

冬弥の肌の色が薄い気がした。

彰人は、己の手と冬弥の顔を見比べる。

やはり白いな、と思った。

あの神社は、神社付近の木が全て伐採されているため、意外と日光が当たる。

それにしては、やけに肌が白い。
彰人
彰人
……お前、なんか白くないか?
冬弥
冬弥
……鬼に近づいているので、体温が低いんです
冬弥
冬弥
そのせいかと
妖を体内に取り込むと、そんなところにまで影響が出るのかと驚く。

角が生え、鉤爪を持ち、肌は白くなる。

妖を取り入れるだけで、ここまで変化してしまうのだ。
彰人
彰人
……やっぱ、禁忌なんだな
冬弥
冬弥
……何についてですか?
彰人
彰人
妖を取り込むの
彰人
彰人
…………そういう実害があるから、禁忌になったんだなって
冬弥
冬弥
そうですね
冬弥
冬弥
……俺はもう、手遅れですけど
もしかしたら、鬼の体つきをしている割に体力が少ないのもそうかもしれない。

人の体でありながら鬼の体に近づくなんて本来有り得ないから、対応できておらず、鬼のような体力は得られない、とか……

そこまで考えて、彰人は思考を放棄し、深いため息を吐く。

__姉の為にこいつを利用している自分に、心配する資格などない。

この旅はまだ序章である。

こいつには、還らずの泉まで向かって、その後、あの神社まで帰ってもらわなくてはいけないのだ。

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