今は長月だ。
流石に、夜は寒い。
焚き火を焚いて、光源と熱源の確保を行う。
今日は野宿だ。
元々持ってきていた布や木の枝をうまいこと組み合わせて、とりあえず寝床を作る。
途中で彰人が森を抜け出して集落に買い出しに行くことで、食料や飲水の確保を始めとしたある程度の問題は解決済みであった。
売店に売っていた弁当を頬張りながら、彰人は火が燃えるさまを眺めていた。
すると、冬弥が、まるで後ろから呼び止められたかのように振り返る。
何事も無かったかのように食事を再開する冬弥を見て、彰人も食事を再開した。
数分して食べ終われば、その容器は彰人が持っていた袋に入れられた。
特にすることもなく、ぼうっと空を眺める。
彰人は星座なんてものは知らないが、綺麗だということはわかる。
いつもは夢の為の歌の練習や走り込みなどで忙しくしている分、ゆったりと時間が流れる感覚は新鮮なものであった。
不意に音が聞こえて、隣を見る。
音の正体は、冬弥が立ち上がる音だったらしい。
すたすたと寝床へと向かう冬弥から目を離して、再度星空を見つめた。
…………彰人は、妖を取り込むことへの重大さがようやく理解できた気がした。
どこかの妖祓いが言っていたことを思い出す。
妖には、3つの階層がある。
1つ目の階層が、割と一般的なもの。
形が明確であり、意志は薄い。
火の玉だとか、小妖とかがこれにあたる。
祝詞や御札などで祓えるらしい。
2つ目の階層が、それなりに強いもの。
形が曖昧だとか、意思があるとか。
川で亡くなった人の思いが集まって怨念になるとか、そんなんらしい。
一瞬で祓ったりはできなくて、何日かに分けたり、数人でやったりして祓うそう。
3つ目の階層が、取り込まないとどうしようもないもの。
還らずの泉はこれの典型例だ。
ただ、妖を取り込むと本人に悪影響を及ぼすから、禁忌になっている。
それ故に取り除くことができなくて、避けることでしか対策できない。
冬弥は、3つ目階層の妖をたくさん取り込んだ結果、ああいう風になったのだろう。
そして、彰人に頼まれたことで、冬弥はもっと不利益を被ることとなる。
姉とは、口論してばっかりだった。
ずっと口喧嘩しっぱなしで、仲良くどこか遊びに行くとかは、それこそ幼い頃しかしていない。
だが、なんだかんだいい姉なのだ。
不本意ながらも、彰人という存在のうち少なくはない部分を絵名が占めている。
そんな存在が突然いなくなって、しかも帰ってくる望みがあるかもしれないと言われれば、それに縋る他ない。
例え禁忌であろうと、関係ないと。
そう決意したのは、つい2日前の話だった。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!