あなた、貴女は覚えていますか?
私たちが出会った日を
姉さんが花柱として柱に就任した日
姉さんは蝶屋敷に戻ってきてこう言った
当時の私は自分に素直で
としか思えなかった
単なる興味本位だった
鬼かもしれないと噂されている女に会えるなら
どうしてその時に鬼舞辻無惨を殺さなかったのか問い詰められる
と、思っていました
ー 産屋敷邸 鬼殺隊本部 一室
姉さんはそう言って襖を開けた
そこには誰もいなかった
姉さん曰く、当時の柱たちは柱に就任後
貴女の御加護を受けようと
眠り続ける貴女がいち早く目を覚ますようにと
眠り続ける貴女の手を握り続けていたそうです
姉さんが部屋から出て行ったあと私は縁側に座った
日差しが気持ちよかった
その時、視界の端に何かが映り
私はその方を見た
不覚にもそう思ってしまった
藤色の髪を下ろし
藍玉を埋め込んだような瞳はただ一点
振り下ろしている木刀を見ていた
少し疑問に思い私は彼女をよく見た
ただの直感でしたが
貴女は私の声に反応し、振り向いてくれました
彼女を見た時私は驚きました
400年眠り続け、伸びきっていた貴女の前髪の隙間から
額に燃えているような痣があり
書記にあった藍玉の瞳に光が宿っていなかったから
そう言う貴女はどこを見ているのか分からなかった
その時
姉が来た
姉さんはそう言っていつものように笑っていた
あなたは姉さんの方を向いて言った
貴女はただ、私を見ていましたね
私を見るその瞳は少し怖かった
見定められている感じがして
震えが止まらなかったのを覚えています
なんでそれを知っているの
貴女はさっきから私の何を見ているの
その言葉がとても嬉しかった
当時の私は自己嫌悪ばかりだった
姉さんのように鬼を斬れなくて
他の隊士よりも身体が一回り小さくて力が無い
それなのに脚には筋肉がついていた
それがとても嫌で仕方なかった
踏み込みに脚の筋肉は必要
でもそれじゃ鬼の頸を斬れない
結果的にアイツの頸も斬れなかった
その助言があったから
私は『蟲の呼吸』を作る決心をしました
それが姉さんとの約束のために必要なことだったから
それから私たちは貴女のお世話係として本部に足を運びましたね
料理を持って襖を開ければ
布団にいないのは当たり前
貴女はいつも同じ場所で木刀を振っていましたね
そう言って貴女はまた鍛錬を始めましたね
私はそれを停めようと思って手を伸ばしましたが
交わされてしまいましたね
言うことを聞かない貴女を追い掛けたり
やっと食事をした貴女に興味を持ってもらって
姉さんの訃報を聞いて涙を流した貴女を見たり
姉さんの死により貴女は私のことを“姉さん”だと言ってくれたり
貴女と過ごした時間の一つ一つが私の宝物です
貴女は今日死ぬと言っていましたね
少し先で待っていますから
鬼舞辻を倒してから
彼岸に来てくださいね
大正コソコソ噂話
藤崎は眠りから覚める前師範である継国縁壱の死を受け止めきれず感情を失いかけていました。ですが目が覚め、胡蝶カナエと胡蝶しのぶ、産屋敷家の人々と触れ合う内に感情を取り戻していきました。
完全に取り戻したのは胡蝶カナエの死です。藤崎にとって胡蝶カナエは目が覚めた瞬間にいた大切な人で姉のような存在で、それが引き金となって記憶以外の何もかもが溢れ出たようです。
また藤崎にはお館様のように先見の明を持っており胡蝶しのぶの未来が見えたのだと思います。
胡蝶しのぶが姉のように振る舞うことを決めた時、藤崎は『しのぶをこれ以上苦しませたくない』と思い『しのぶ姉さん』と呼ぶようになったんだと思います。
藤崎にとっての家族は双子の妹と継国縁壱とその奥さんであるうたさん、そして彼女のお腹の中にいた子供で大切な人が死ぬとその関係者の心には穴が空くということを知っているのでその穴を埋めようとしたのでは無いでしょうか。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。