彼女が振り下ろしたバケツは私の頬に直撃した。
底のボコッとした突起がちょうど顔に当たり、予想以上の痛みを感じた。
床に座り込む私の目の前で、彼女はなんと椅子を手にして笑っていた。
彼女、結構パニックだ。
とばっちり!?嘘でしょ!?私こんなことで殺されちゃうの!?
彼女は、勢い良く椅子を頭上に上げた。
助けて────
────バンッ!!
彼女は椅子を下ろし、床に落とした。
───パンッ
翔は歩み寄ってきた彼女の頬を思いっきり叩いた。
...反省?
遅れてドアから入ってきた二人が私の元へ来てくれた。
彼女は大粒の涙を流しながら座り込んでしまった。
なにか言ったみたいだったけど、季織達が呼んでいた先生達が駆け付けてきてよく聞こえなかった。
────────
第十一話
2度目の悲劇
────────
あの後季織達が保健室まで着いてきてくれたけど、季織と鶫は先生たちに呼ばれて会議室に行ってしまった。
立ち上がって手探りでどんどん棚を開けていく。
私の顔の横の棚に手が伸びた。
振り返ると、すぐ目の前に翔の顔があった。
それはそれは優しく、頬に手を添え絆創膏の上から傷をなぞり、まるで自分が痛い思いをしたような顔でそう言った。
────コンコンコン
翔はそそくさと保健室を出て行った。
それより、気になってる事を一つ、いいでしょうか。
─────────
第十一話 [完]
次回▶︎第十二話
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。