いつからか二人は、
私に隠して何かを話すようになった。
何を話してるのか聞いてみても、
「なんでもないわよ〜。」
「気にしないでね。」
と、はぐらかされた。
私、"あなたの下の名前"は偽の名前だった。
いや、一二三が偽だったのかは分からない。
私たち三姉妹にはそれぞれ名前はあった。
だけどいつの日かお姉ちゃんたちが
私たち3人の間だけの名前を決めよう、と
よく分からないことを言ってきた。
私は、あなたの下の名前。
一お姉ちゃんは翠。
二三お姉ちゃんは紬。
今思えば、3人とも元の名前は適当だった。
長女だから一がつく名前。
次女だから二がつく名前。
三女だから三がつく名前。
本当に大切な娘たちにつける名前だろうか?
あの時は別になんとも思わなかったけれど、
今は、一二三という名前は好きじゃない。
でも、3人で決めた名前は、
特別な感じがして好きだった。
屋敷の中で、3人だけが知ってる名前。
私はこの名前を大切にしていた。
ふるるっと身震いする私の頭をポンポンと撫でる母。
あまりの怖さに涙目の私を見て
「あらあら、ごめんなさいね。」
と、私を抱き上げてあやした。
そんな話を聞いてから、私は
絶対に井戸には近づかないと決めた。
そして、しばらく経ったある日から
翠お姉ちゃんと会うことが少なくなった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!