教室の扉を開けると、そこはすでに新しい制服の群れで満たされていた。
教室の扉を開けると、そこはすでに新しい制服の群れで満たされていた。
黒板には、手書きの座席表が貼り出されている。新入生たちがそれを覗き込んでは、
「あ、俺ここだ」
「窓際じゃん、いいな」
などと口々に声を上げていた。
後ろから覗き込んできた大和が、あなたの下の名前の肩を軽く叩く。あなたの下の名前は人混みの隙間から自分の名前を探し出し、窓際の後ろから二番目の席を指差した。
大和が座席表の”朝倉”の文字を指差して、嬉しそうに声を弾ませる。
大和とあなたの下の名前は鞄を手に取り、指定された席へと向かった。
木の椅子を引き、腰を下ろす。鞄を机のフックに掛け、ふぅと小さく息を吐きながら窓の外を見た。
視線の先、突き抜けるような春の青空を二分するようにして、やはりあの『天蓋』が圧倒的な質量でそこに浮かんでいる。
これほど巨大なものが空にあるのに、なぜ世界はこんなにも平穏を装っているのだろう。あなたの下の名前がそんなぼんやりとした疑問を抱いた瞬間、背後の席からガタコンと派手な音が響いた。
大和が前のめりになって、あなたの下の名前の背中に話しかけてくる。そんな大和にあなたの下の名前は向き直す。
大和は満足そうに椅子の背もたれに体重を預けた。
あなたは再び窓の外に目を戻す。確かに、あの生徒会長の姿は妙に印象に残っていた。その時、前方の引き戸がガラガラと音を立てて開いた。
入ってきたのは、仕立てのいい落ち着いた色のスーツを着た女性教師だった。
肩のあたりで綺麗に切り揃えられた黒髪に、穏やかな、けれどどこか全てを見透かしているような知的な瞳。彼女が教壇に立つと、それだけで教室のざわめきがすっと引いていった。
桐生先生はチョークを手に取ると、黒板に流れるような筆跡で自分の名前を書いた。
そして、コトン、とチョークを置くと、先ほどまでの柔らかな微笑みを消し、クラス全員を静かに見渡した。
__その言葉に教室の空気が1度下がる
……先生の声のトーンが、わずかに低くなった。
窓から差し込む春の陽光が、なぜか急に冷たさを帯びたように感じられ、それぞれの背中に微かな緊張が走る。
桐生先生は窓の外を指差した。新入生たちの視線が一斉に、青空に浮かぶ不気味な巨大建造物へと向く。

※AI生成
先生の手が動き、黒板に二つの漢字が躍った。
__”碑欠”

※AI生成
教室が、静かな熱を帯びていく。
世界を救うための戦い。自分たちが、その大役に選ばれたのだという高揚感が、新入生たちの間にじわりと広がっていくのが分かった。
桐生先生は、黒板の端に、チョークでくっきりと数字を刻み込んだ。
『 108 』
先生は一呼吸置き、生徒たちを鼓舞するように力強く微笑んだ。
クラスのあちこちから、「おお……」という感嘆と、やる気に満ちた力強い息を呑む音が聞こえた。
あなたの下の名前は、じっと黒板の『108』という数字を見つめていた。
世界に平和を取り戻すための、希望の宝探し。それが、自分たちの高校生活の正体。
ふと、後ろの席から、衣擦れの音がした。
振り返ると、大和がいつものお調子者の笑みを完全に消し、真剣な、けれどどこか「やってやるぞ」と希望を宿した目で、黒板を見つめていた。
あなたの下の名前の視線に気付いた大和は、一瞬だけ目を合わせ、小さく、頼もしげに頷いてみせた。
窓の外では、満開の桜が風に舞っている。
その遥か上空で、巨大な天蓋が、何も知らぬ人類を静かに見下ろしていた。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。