「あなた、ほら行くぞ!」
『玲王、待って!今行くから』
ホームルームが終わり、チャイムが鳴ると同時に玲王が声を上げた。心地よい快晴に、空を飛んでいる鳥たちも楽しそうに見える。
今日の当番が靡くカーテンをまとめているのを横目に、私はカバンを肩に掛けた。
「あなたは、マネージャーで正式入部ってことでいいんだよな?」
『うん。お父様もそれで許してくださったし』
『玲王のサポートをしたい』とそれらしい理由を付けてお願いしてみたら「くれぐれも一緒にサッカーしようとなんてするなよ」と釘を刺されながらも許していただいた。
本当に、ありがたい限りだ
秋も後半になり、例年ならもう肌寒いはずの時期だが、天気予報では異例の夏日という言葉が多用されている。
グラウンドに出て、もう練習に励んでいるサッカー部の服装は半袖が多い。
私が来た事を一瞥し、拡声器を持って絵心先生は「集合」とこれまた覇気のない声で部員らに言った。
「今日からお前らのマネージャーになるヤツだ。自己紹介しろ」
『神蔵見あなたです。皆さんを精一杯サポートさせていただきます。よろしくお願いします。』
玲王が「堅苦しすぎ」と言いたげな表情でこちらを少し笑いながら見ている。その横には、イマイチやる気のない凪くんがぼーっと突っ立っていた。近くには見学のときに1on1をした潔くんが嬉しそうな顔で私を見ている。
2人と目が合ってしまい、少し照れくさくなった私は部長っぽい中紅色の髪に碧色の眼をした先輩に視線を向けた。
うわー、興味なさそ...
「知っている奴も居るかもしれないが、まぁ良くしてくれ
じゃ、解散」
ここのサッカー部は、自分に合ったトレーニングを自分で考えてやっているらしい。画期的な仕組みだ。
それ故に私のすべきことがわからない...
とりあえず、副顧問で選手のサポートをしている帝襟先生に聞いてみようと話しかけると、分厚い大量の資料を抱えていた。
『帝襟先生。
...その資料、どうしたんですか?』
「あぁ、これはね、選手みんなの記録をまとめてるの」
『え、もしかしてそれ、今まで1人でやってたんですか?』
「まあね。
でも、これが私の仕事だから」
『私、手伝います』
「え、いや大丈夫だよ。マネージャーの仕事手伝ってくれるだけで助かるから!」
『いえ、でも帝襟先生も教科持ってますし、大変でしょう?
私、少しでも手伝いたいんです』
「えっと、じゃあちょっとだけいい?」
『はい。任せてください』
先生が抱えている資料を半分くらいとって、部室の角にある小さな机の上に置いた
するとその時、部室の扉が大きく音を立てながら開いた。
「マネージャーちゃん!ちょっと気になることがあるんだけど!」
黄色のインナーカラーをしている部員が、とても楽しげな様子で飛び込んできた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!