時刻は7時。
選手の食事について料理人の方と打ち合わせを終え、
夕食会場に入ると甲斐さんの声が飛んできた
そう言って向かうとそこは完全に“ホークステーブル”
健介さん、佑京さん、甲斐さんが座るテーブルには
ひとつ空席があった
そう言われたのは佑京さんの目の前の席で一番壁側の席
佑京さんの隣は健介さんで、わたしのとなりは甲斐さん
ですね、と返して席に座る
ダルさんがあなたの名字を気遣って俺らと同じテーブル
にしてくれたんや
他のスタッフと選手の席はクジで決めたんやけどな笑
____と甲斐さんはわたしに耳打ちした
ダルさんが、?
いやいや、さすがに気遣い紳士すぎるよ
甲斐さんが笑って、健介さんと佑京さんも笑う
その時ふと
やっぱりわたし、ここが落ち着くって
そうはっきり思った
甲斐さんがいて、健介さんがいて、佑京さんがいて
この空間が、この空気感が1番落ち着くって
駄々こねる佑京さんを健介さんが肘でつつく
予想外の質問に驚きすぎて目が開いてしまった
わたしの反応をみて笑う甲斐さんと健介さん
そう尋ねると健介さんは内緒ね、と言って笑った
そんな事実は全く無いのに勝手に盛り上がる3人
たまに皆が見せる高校生みたいな顔
好き勝手言って…強いとか弱いとか無いから!!
勝手に噂したら失礼だし!!トラブルの元だし!!
とまくし立てたいのを堪えて冷静に発言する
声を揃えて「ええ〜」と面白くなさそうな3人
またもや「ええ〜」と反応する3人
じゃあ皆さんは可愛い子探しに来てるんですか?と
冗談半分で聞くと、きょとんとした顔をされた
うぅぅぅ…もう!!!
そういう答えを求めてるんじゃないです!!!
何も言い返せなくて困っていると健介さんが笑いだした
佑京さんはなぜかキャッキャ笑いだして
それを見た甲斐さんも笑顔になった
ここだけの話だけど、と甲斐さんが声のボリュームを
下げて続ける
健介さんがにやけながら頷く
と言われ、口をとがらせてる佑京さん
佑京さんはわたしに上目遣いをする
怒られたくなくて可愛いフリをするのはいつものことだ
ほぼ?と聞き返したのは健介さん
ほぼです、と言いきって話題を強制的に終わらせ
その話は長くなるから次話します、と釘を刺す
健介さんは優しいから、追及しないでくれた
_______________________
牧、岡本、戸郷、佐々木テーブル
少し俯いて口を開く戸郷
戸郷に向かって手をぶんぶん回しながら喋る牧
その隣で無心で食べ続ける佐々木
一瞬驚いて手を止める佐々木
前のめりになる岡本、牧、戸郷
さっきの打ち合わせもあなたちゃんと話せてたの
ダルさんと宮城だけっすよ、と付け加える戸郷
そう言って佐々木の肩を揺する牧
更に激しく肩を揺する牧
困った顔で苦笑いする佐々木
なんて?なんて?と勢いが止まらない牧
えぇー、と言いながらも口角を上げる岡本
奇声を出しながら立ち上がる牧
口角がずっと上がったままの岡本
ちょ、和真さん照れてるじゃないすかとツッコミを
入れる戸郷
首を横に振るもニヤけが止まらない岡本
________________________
山川、村上、山田テーブル
内野手が集まったテーブルということもあって、
佐々木が遠慮しているように見える牧テーブルと違い
打ち解けた雰囲気の3人
そうそう、と頷く山川
得意げな表情の山田
佑京ね、あなたちゃんのカバン持ってて隣に座らせる気
満々だったんだよ、俺殺されるかと思った
と大変だったというあの瞬間を回想しながら話す山田
山田が指さしたのはホークス所属が集まったテーブル
佑京には勝てないんじゃない?と笑う山川
と村上の背中を叩く山田
やめてくださいよ、と笑う村上
あなたに対する感嘆のため息をつく3人
またホークスのテーブルに目を向ける3人
周東が満面の笑みであなたに話しかけると
あなたは顔をしかめて何か言いかけ、その後笑った
あなたのコロコロ変わる表情を見て目を細める周東
どこから見ても完璧な2人で、まるでスポットライトが
当たっているかのように眩しい
あなたちゃんそういう意味でもすごいよね…と呟く山川
村上の肩をポンと叩く山田
俺も行きたい!と笑う山川
ダメです、と冗談半分に断る村上
________________________
山本、宮城、源田テーブル
こいつツーショ撮ってましたよ、と宮城を指さす山本
そうかもしれないけど、と笑う源田
目を見合わせる山本と宮城
ほんと良い関係だよね、と宮城に言う源田
宮城の言葉に身構える山本と源田
解散のときトイレ出たらロビーに2人いて、
見ちゃいましたと小声で言う宮城
やっぱりそういうことですかね?と笑う宮城
えぐいしか言えなくなった山本
試合の時の目になってますって、と笑う宮城
ガチよそりゃ、と目をキメる源田
他の選手にも根回ししてきます、と席を立つ山本
________________________
キャンプ前夜、これから始まる日本代表としての
輝かしい日々を期待しながら過ごす選手、スタッフたち
慣れた仲間と自然体で笑うあなたの表情に、
誰もが目を引かれただろう____
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。