__放課後。
私立浪花学園・芸能科のレッスン室。
防音の壁の向こうでは、ダンス練習のビートが響いている。
その言葉を口にしたのは丈一郎だった。
ストレッチをしていたメンバーの動きが、一瞬で止まる。
恭平と和也が同時に声を上げる。
丈一郎はスマホを見ながら、低く言った。
沈黙。
誰もが頭の中で計算していた。
__年齢、演技経験、話題性。
駿佑は静かに息を呑み
大吾は表情を変えないままペットボトルの水を飲んだ。
そう言って笑った大吾。
その笑顔は完璧で
だけどどこか無理に作ったようにも見えた。
丈一郎はその様子を見て、軽く笑い返す。
恭平がツッコむように言ったが、誰も続けなかった。
空気が変わったのを、全員が感じていた。
その日のレッスンは、異様に重かった。
動きは合っているのに、呼吸が噛み合わない。
先生の声だけが響く。
誰も答えない。
全員が“何か”を考えていた。
…もし、自分が主演を取ったら。
…もし、取れなかったら。
…その差が、“距離”になるんやろか。
レッスン後、駿佑がひとり残ってストレッチをしていた。
鏡越しに映る自分を見つめながら、小さく呟く。
その声に大吾が入ってきた。
彼は何も言わず、鏡越しに彼の隣へ座る。
その言葉に、大吾は少し笑って
と呟いた。
その目は、少しだけ寂しかった。
数日後。
オーディションの情報が正式に発表される。
出演者はまだ未定。主演候補には数名…
その中に、「なにわ男子・道枝駿佑」の名前があった。
教室中がざわつく。
「 すごいじゃん! 」
「 やっぱりみっちーでしょ! 」
そんな声の中で、他のメンバーはそれぞれの教室で
静かにそのニュースを見つめていた。
丈一郎はスマホをポケットにしまい
その言葉を聞いた流星が静かに答える。
窓の外では夕日が沈んでいく。
長く伸びた影が、7人の足元で交わり、そして少しずつ
離れていった。
この日を境に、“バランス”は静かに傾き始めていた。
誰も気づかないうちに__。



















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!