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第2話

揺 れ る バ ラ ン ス .
89
2025/12/14 12:00 更新
__放課後。

私立浪花学園・芸能科のレッスン室。

防音の壁の向こうでは、ダンス練習のビートが響いている。


Joichiro.
Joichiro.
…主演候補、俺らの中から出るらしいで。


その言葉を口にしたのは丈一郎だった。

ストレッチをしていたメンバーの動きが、一瞬で止まる。

Kyohei.
Kyohei.
え、マジで?
Kazuya.
Kazuya.
どのドラマ?

恭平と和也が同時に声を上げる。

丈一郎はスマホを見ながら、低く言った。

Joichiro.
Joichiro.
ゴールデン枠の連ドラ。
学園モノやって。主演は若手アイドル枠ひとり。

沈黙。

誰もが頭の中で計算していた。

__年齢、演技経験、話題性。

駿佑は静かに息を呑み
大吾は表情を変えないままペットボトルの水を飲んだ。

Daigo.
Daigo.
でもさ、誰が選ばれても“なにわ男子の宣伝”にはなるやん!笑

そう言って笑った大吾。

その笑顔は完璧で
だけどどこか無理に作ったようにも見えた。

丈一郎はその様子を見て、軽く笑い返す。
Joichiro.
Joichiro.
せやな。表向きは…そうやな。
Kyohei.
Kyohei.
“表向きは”ってなんやねん

恭平がツッコむように言ったが、誰も続けなかった。

空気が変わったのを、全員が感じていた。

その日のレッスンは、異様に重かった。

動きは合っているのに、呼吸が噛み合わない。
先 生 .
先 生 .
ストップ
先生の声だけが響く。
先 生 .
先 生 .
どうしたん今日は。
目が合わへんやん。チームの呼吸どこいったん?


誰も答えない。
全員が“何か”を考えていた。

…もし、自分が主演を取ったら。

…もし、取れなかったら。

…その差が、“距離”になるんやろか。
レッスン後、駿佑がひとり残ってストレッチをしていた。

鏡越しに映る自分を見つめながら、小さく呟く。

Shunsuke.
Shunsuke.
…これが、チャンスなんやろ?

その声に大吾が入ってきた。

Daigo.
Daigo.
まだ残ってたん?
Shunsuke.
Shunsuke.
うん。もう少し台詞の練習しよかなって。

彼は何も言わず、鏡越しに彼の隣へ座る。

Daigo.
Daigo.
みっちー、焦ってるんやな。
Shunsuke.
Shunsuke.
…焦るよ。結果出したいし。
俺、まだ“大吾くんみたいに信頼されてる”わけちゃうから。


その言葉に、大吾は少し笑って

Daigo.
Daigo.
信頼なんて、積み重ねても一瞬で崩れるで。

と呟いた。

その目は、少しだけ寂しかった。






数日後。

オーディションの情報が正式に発表される。

出演者はまだ未定。主演候補には数名…

その中に、「なにわ男子・道枝駿佑」の名前があった。

教室中がざわつく。

「 すごいじゃん! 」

「 やっぱりみっちーでしょ! 」

そんな声の中で、他のメンバーはそれぞれの教室で

静かにそのニュースを見つめていた。



丈一郎はスマホをポケットにしまい
Joichiro.
Joichiro.
…ここからが本番やな。


その言葉を聞いた流星が静かに答える。
Ryusei.
Ryusei.
ほんまの勝負って、選ばれるまでやないんやな。
選ばれてから、や。


窓の外では夕日が沈んでいく。

長く伸びた影が、7人の足元で交わり、そして少しずつ

離れていった。
この日を境に、“バランス”は静かに傾き始めていた。

誰も気づかないうちに__。

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